パソコンをインターネットにつなぐにはIP設定が欠かせないが,このIP設定に必ず出てくる項目の一つに「デフォルト・ゲートウエイ」がある。この項目に設定するのは,ルーターのIPアドレスだ。では,なぜルーターのことをゲートウエイなどと呼んでいるのだろうか?

 ゲートウエイという用語自体は,コンピュータ・ネットワークの技術が発展し始めた1970年代ころにはすでに使われていた。当時は,コンピュータのメーカーごとにデータをやりとりする通信手順(プロトコル)やデータの記述形式(フォーマット)が異なっていた。そこで,こうしたプロトコルやフォーマットの違いを相互に変換しするコンピュータのことを「ゲートウエイ」と呼んでいたのである。

 では,ルーターはなぜゲートウエイと呼ばれるのだろうか。これは,インターネットの発展の歴史に背景がある。

 初期のインターネットでは,ネットワークの境界に専用のコンピュータを設置してIPパケットを転送していた。つまり,今のルーターの役割であるルーティングは,専用のコンピュータが処理していたのである。そして,このコンピュータのことをゲートウエイと呼んでいた。それから月日が流れ,ルーティングはコンピュータではなく,専用装置であるルーターが処理するようになった。それでもルーターは今でもゲートウエイと呼ばれ続けているというわけだ。

 ゲートウエイ(gateway)という英単語にはもともと,「二つの領域をつなぐ出入り口」という意味がある。ルーターはまさに,異なる種類のネットワークを接続するための装置である。例えば,ルーターをLANとWANとの出入り口に置けば,イーサネットとADSLの二つをつなぐことができる。そう考えれば,ルーターのことをゲートウエイと呼ぶのも理解できるだろう。

 このように考えると,ゲートウエイという用語は,ルーターだけを指した言葉ではないことがわかる。例えば,「VoIPゲートウエイ」は,音声信号とIPパケットを相互に変換して電話網とIPネットワークをつなぐ装置である。また,「アプリケーション・ゲートウエイ型ファイアウォールは」,アプリケーション・プロトコルを解釈して,社内ネットワークとインターネットを相互につなぐ装置である。今は,異なる種類のネットワークを接続する装置のことをゲートウエイと呼んでいるわけだ。

半沢 智