東京・秋葉原のパソコン・ショップをのぞいたら,4ポートのギガビット・イーサネット対応LANスイッチが2万円を切る価格で売っていた。今年の7月ころまでは,どんなに安くても6万円前後していた。それと比べると実に3分の1だ。どうしてこんなに安くなったのだろうか。

 ギガビット・イーサネットは,伝送速度が1G(=1000M)ビット/秒のイーサネット仕様。ついこの前まで主流だった10BASE-T(10Mビット/秒)の100倍,現在最も多く使われている100BASE-TX(100Mビット/秒)と比べても10倍の超高速版イーサネットである。

 ギガビット・イーサネットには大きく2種類の仕様がある。それは,ケーブルに光ファイバを使うものと,銅でできたLANケーブル(より対線)を使うものだ。今回見つけた2万円を切るギガイーサ・スイッチは,より対線を使う1000BASE-T対応の製品。パソコンの中・上級者向けブランド「玄人志向」の4ポート・スイッチ「GSW04AL-HUB」である。同社の8ポート・スイッチ「GSW08AL-HUB」も3万円を切る価格で店頭に並んでいる。

 なぜこんなに安くなったのだろうか。実際に担当者に聞いてみたら,「製品内部のチップの単価が下がったから」(玄人志向の主幹を務める二松光氏)だという。「まだ他社から同じ価格帯の製品が出てこないのが不思議なくらいです」(二松氏)。

 でも,低価格の秘密はそれだけではなかった。LANスイッチが備えるバッファ・メモリーの容量を減らしたのも低価格化に大きく寄与しているという。バッファ・メモリーとは,スイッチが取り込んだデータ・フレームを振り分けるためにいったんためておくメモリー領域のこと。スイッチが即座に処理しきれない大量のフレームが来ても,フレームを捨てずに済ませるためのものである。

 玄人志向のギガイーサ・スイッチは,256Kバイトのバッファ・メモリーを各ポートで共有して使う構成。「従来,他社から出ていた高額な製品に比べて,バッファ容量は7~8分の1になっている」(二松氏)。そんなに減らして大丈夫なのか,ちょっと心配になるが,「家庭内で使うのならこれでも十分高速イーサネットを体感できる」(二松氏)という。

 企業の大規模なLANでは多数のクライアントが一斉に通信することもあるので,バッファ・メモリーの容量は大きいに越したことはない。家庭で使うのが前提だからこそ,低価格にできたというのが真相のようだ。

塗谷 隆弘