インターネットに個人情報が流れ出てしまう──。そんな,漠然とした恐怖を感じたことはないだろうか。クレジットカードの番号を入力するときや,Webサーバーにアクセスするとブラウザが通知してくるCookieの利用場面など,個人情報が漏れるんじゃないかと気にしているユーザーも多いはずだ。

 しかし,こんなことよりももっと大胆に詳細な個人情報を第三者に漏らすソフトがある。例えば,ReGetというファイル・ダウンロード・ツール。ダウンロード途中で接続が切れたとき,最初からではなく途中から再開できるという便利なソフトだ。しかし,このソフトの機能はそれだけではない。バックグランドで,ユーザーのパソコンのハードウエア情報,インストールされているアプリケーションの種類,これまでに訪問したサイトの履歴などの個人情報を自動的に送信するのだ。

 こうしたソフトウエアは,スパイウエア(またはアドウエア)と呼ばれる。知らない間に情報が漏れているなんて,ユーザーにとっては気持ちのいいモノではない。

 でも,これらのソフトウエアは決して違法なものではない。なぜか。その秘密は,ソフトをインストールするときに出てくる「使用許諾契約書」にある。

 スパイウエアの契約書には,「あなたの個人情報を第三者に送信します」といった趣旨の記述が,必ずどこかに潜んでいる。しかし,インストール時に契約書のすみずみまで読むユーザーはほとんどいない。スパイウエアはこの盲点を突く。しかも,わざと英語で書いてあったり,小さな文字だったり,スクロールさせないと表示されなかったりする。内容もあいまいで,どこにどんな情報を送るのか,送られた情報がどのように利用されるのか,ということを明記していることはほとんどない。

 軽い気持ちで使用許諾契約書が表示されたウインドウで「はい」のボタンを選ぶと,契約内容を理解したかどうかにかかわらず,個人情報提供に合意したことになる。利用者が合意しているので,違法にならないのだ。

 いかがわしいソフトは無料で便利でも使わない──。スパイウエア対策は,こういった当たり前の方法が重要になる。

塗谷 隆弘