自分のメールをだれかに見られてしまうのではないか…。おそらくほとんどの人は,こんな心配をすることなく毎日メールをやりとりしてるはず。仕事のメールにしても私信のメールにしても,まさかだれかに見られるはずがないと思っているだろう。ところが,実はメールをのぞき見するのは難しい話ではない。今回はその危険性を見ていこう。

 相手にメールを送る際,メーラーからメール・サーバーに送られるメール・データは,実は生のテキスト・データである。メーラーはメール・サーバーにコマンドを送り,その応答を受け取る。この最中,やりとりされるのはすべて生のテキストなのである。勝手に他人のメールを読むなんてことは,その気になれば造作もないのである。

 この危険性は,メーラーとメール・サーバーが離れていればいるほど高まる。社内のパソコンから社内のメール・サーバーにアクセスしているなら,盗み見できるのは社内のだれかということになる。しかし,社内から社外のプロバイダのメール・サーバーにアクセスしている場合だと,会社からそのプロバイダの間にいるだれでも盗み見できてしまう。

 幸い,こうしたメールの盗み見の危険性を減らすためのしくみを最近のメーラーは備え始めている。それがSSL。そう,Webブラウザでオンライン・ショッピングするときによく使っている,あのSSLである。送信するデータを暗号化して送り届けるSSLのしくみを,メールにも適用するだ。これで,SMTPで送ったりPOPで受け取ったりしている間は通信路が暗号化されるので,クラッカがメールの中身をのぞき見するのはかなり難しくなる。SSLは,OutlookExpressやOutlookなど,主要なメーラーの最新バージョンでたいてい対応している。

 しかし,残念ながらSSL対応のメール・サービスを提供しているプロバイダはほとんどない。ただ,企業が自社のメール・サーバーをSSL対応にすることはそれほど難しくない。企業でメール・サーバーを管理しているのなら,すぐにでも使ってみることをお薦めしたい。

 気を付けたいのは,SSLをオンにしたからといって,メールが相手に届くまでのすべての区間で盗み見の心配がなくなるわけではないこと。守れるのは,あくまでメーラーからメール・サーバーにメールを送るときと,メール・サーバーからメールを受け取る区間だけ。メール・サーバーとメール・サーバーの間は,実は無防備のままなのだ。メール・サーバーの間の部分でも暗号化してメールを送りたいのなら,SSLとは別に暗号メールのしくみを使ったほうがいいだろう。

高田 学也