NTTドコモが提供するiモードに対応した新型の携帯電話機504iシリーズが登場した。そのセールス・ポイントの一つが,データ通信速度が3倍に向上するというもの。具体的には,データ受信時の速度が従来の9600ビット/秒から28.8kビット/秒にまでアップするという。どのようにして速度を向上させたのだろうか。そのカラクリを説明しよう。

 NTTドコモの携帯電話は800MHz帯と1.5GHz帯の電波を50kHz間隔に細かく分け,音声用の上りと下り,データ通信用の上りと下りにそれぞれ別の周波数を使っている。iモードで使うデータ通信用のチャネルは,1本の電波を時間軸で三つに分け,同時に3台の端末が利用する格好になっている。送信するときは,割り当てられたタイミングで3台のiモード端末が順番にデータを送り出す。データ受信時は,各iモード端末が全受信データの中から自分あてのデータだけ(全体の3分の1)を取り出す。これで,1端末当たり9600ビット/秒の速度が得られていたのである。

 ただしこの方式では,ほかの端末がデータを受信していなくても,その端末に時間が割り当てられるので,データがなにも送られていない時間が出てしまうことがある。

 504iシリーズの改良は,この点に着目したもの。受信時に限って,個々の端末に固定的に時間を割り当てるのではなく,受信データがある端末が優先してデータ受信時間を利用できるようにしたのだ。この結果,すべての時間を1台の端末が利用する場合,最大で9600×3=28.8kビット/秒のデータ受信速度が得られることになったのである。

山田 剛良