ブロードバンド・ルーターに新しい流れが見えてきた。ユニバーサル・プラグ・アンド・プレイ(UPnP)に対応した製品が登場してきたのだ。すでに出荷している製品も,ファームウエアの変更でUPnPに対応するという動きもある。こうしたねらいはどこにあるのか,しくみと効果を合わせて見てみよう。

 そもそもUPnPとはなにか。これは,ネットワークにつながった家電製品などをコンピュータが自動認識し,リモートから家電製品を設定するために米マイクロソフトが定めたしくみである。

 では,家電機器向けの機能をブロードバンド・ルーターが備える理由はどこにあるのだろうか。それは,UPnP仕様に「NATトラバーサル」という機能があり,この機能を使えば,WindowsXPが標準装備するチャット・ソフト「Windows Messenger」が問題なく動くようになるからである。NAT(network address translation)とは,インターネットで利用するグローバルIPアドレスと,LAN内で使うプライベートIPアドレスを相互転換する機能のこと。続くトラバーサルとは,「全探索」という意味である。

 Windows MessengerはIP電話やビデオ・チャットの機能を持つが,こうした機能は,NATを使うブロードバンド・ルーター経由では利用できない。それは,こうした機能を使うとき,Windows Messengerがデータ部分にもIPアドレスを埋め込んで通信するから。NAT機能では,IPパケットのヘッダー部にあるあて先や送信元のIPアドレスを変換するが,データ内のアドレスまで変換できないため,つじつまが合わなくなり,通信ができないのだ。

 NATトラバーサルは,ルーターがプロバイダから割り当てられたグローバルIPアドレスなどの情報をLAN側のコンピュータに通知するしくみ。パソコンがルーターからのメッセージを受け取り,各インターネット・アプリケーションにWAN側のIPアドレスなどの情報を伝えられる。このしくみをアプリケーション側で活用すれば,WAN側に割り当てられたIPアドレスを最初からパケットのデータ部に書き込めるので,NATを介した通信でも,IPパケットのヘッダー部とデータ部のどちらも同じグローバルIPアドレスになる。こうして通信が可能となるのである。

斉藤 栄太郎