友人の家や自宅の電話番号で,市外局番がある日を境に短くなった経験はないだろうか。そして,なぜか市内局番のケタ数が増えている。例えば,(0722)82-xxxxという番号がいつの間にか(072)282-xxxxとなったりする。市外から電話をかけるときは,結局すべての番号をダイヤルするから変わりはない。でも,市内通話では局番を一ケタ余計にかけることになる。どうして,このように局番を変更するのだろうか。

 答えは,その市外局番のエリアの電話が増えて電話番号を増やさなければならなくなったから。と言われても,直感的に理解するのは難しいかもしれない。市外局番を短くしても,全体のケタ数は変わらない。それなのに,どうして市外局番を短くすると電話番号を増やせるのだろうか。そこには,電話番号のカラクリがある。そこでまず,電話番号の決まりをざっと確認してから,疑問に答えていこう。

 電話番号の形式は,ITU-T(国際電気通信連動電気通信標準化部門)の勧告E.164で国際的に決められている。固定電話の場合,電話番号は三つの部分--(1)国番号,(2)国内あて先番号,(3)加入者番号--で構成され,合計で最大15ケタになるようにする。国番号は,国を識別するための番号。米国なら「1」,日本なら「81」である。ITU-T勧告で決まっている。次の国内あて先番号は,要するに市外局番(最初の「0」は除く)と市内局番のこと。これは総務省が割り当てる。最後の加入者番号が電話番号の最後の4ケタの部分である。NTT東西といった電話事業者が割り当てる。

 こうした固定電話用の番号のほかにもさまざまな電話番号がある。例えば,携帯電話やPHSの電話番号は「0X0」で始まる。「0XY0」のような特別なサービスを示す電話番号もある。代表例は「0120」で始まるフリーダイヤルである。さらに,「110」や「119」のように,「1」から始まる3ケタの番号は,日本全国どこでも使える「特番」として使われている。

 では,実際に電話をかける場面を追いながら,前に述べた疑問を解いていこう。

 市外通話をかける場合,市外通話であることを示す識別番号(プレフィックス)の「O」を頭に付け,続いて市外局番,市内局番,加入者番号をダイヤルする。相手が同じ市内なら,市外局番を省略し,市内局番と加入者番号をダイヤルする。このとき,もし市内局番の先頭が「0」だと,市外局番だと間違ってしまう。また「1」だと,今度は特番なんだと誤って認識してしまう。このため,市内局番の先頭のケタには「0」と「1」の数字が使えず,その分だけムダが生じている。

 そこで,市外局番の最後尾のケタを,市内局番の先頭に持ってくるのだ。すると,これまでの市内局番の先頭に使えなかった「0」と「1」が,二ケタ目になるので使えるようになる。こうして,全体の電話番号のケタ数を変えずに,一気に電話番号を増やすことができるわけである。

高橋 健太郎

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