第3世代携帯電話がいよいよスタート――。今月はじめ,こんな見出しが雑誌や新聞をにぎわした。第3世代携帯電話とは,NTTドコモがこの10月に正式にスタートした「FOMA」を指している。NTTドコモもマスコミも,なんの断りもなしに“第3世代”とうたっている。さて,“第3世代”とは一体なんのことだろう。

 実はこれ,携帯電話の技術方式の変遷を指している。これまで携帯電話は2回,大きな技術改革が行われた。FOMAが採用した方式は,2回目,つまり最新の技術改革によってもたらされた方式なのである。

 ここで第1世代と第2世代を振り返ってみよう。第1世代は,アナログ方式の携帯電話のこと。日本では,1979年にサービスが始まった。この段階で,携帯電話をどこに持ち歩いても電話をかけられるという基本的なしくみはできあがった。

 第2世代は,ディジタル方式を指している。日本では,1993年にスタートした。音声データのやりとりをディジタル方式にすることで,音声信号を圧縮して周波数帯域を効率よく使えるようにしたのである。現在,FOMAをのぞく携帯電話は,iモードにしてもcdmaOneにしても,第2世代に属する技術で実現されている。

 第2世代までは,それぞれの国や地域の標準化団体が携帯電話の規格を決めていた。このため,国や地域ごとに違う携帯電話方式が乱立し,せっかく持ち運べる携帯電話なのに,ほかの国では使えないというケースが少なからず生じることになった。

 このような第2世代携帯電話の反省に立って,世界中で共通の国際標準を作ろうという機運が盛り上がった。これが第3世代である。このため第3世代携帯電話の特徴は,技術的な進歩より,国際標準という統一規格に基づいているところにある。

 それでは,FOMA端末を海外に持ち出したとき,その国で第3世代携帯電話が始まっていればFOMA端末を使えるのだろうか。実は,そうはなっていない。それぞれの地域の標準化団体やメーカーの思惑が絡み,最終的な技術仕様を一本化できなかったからだ。日本でも,異なる方式の第3世代サービスが提供される見込み。日本ではNTTドコモとジェイフォンが「W-CDMA」と呼ぶ方式を採用するが,KDDIは「cdma2000」と呼ぶ別の方式を採用する考えである。

 第3世代が始まったばかりではあるが,なんとその先の「第4世代」という話も飛び出している。第4世代は50M~100Mビット/秒という超高速を実現し,携帯電話と無線LANを兼ね合わせたようなシステムになるという。

 もっとも出口の見えない世界的なIT不況の中,携帯電話事業者は第3世代への移行も及び腰になっているのが実情のよう。第4世代の前に,第3世代のあり方がもう一度見直される可能性も十分ありそうだ。

高橋 健太郎

<日経NETWORK11月号では,携帯電話がなぜどこでもつながるのかを解き明かした特集記事「携帯電話のしくみを探る」を掲載しています。ぜひ,ご覧下さい>

関連リンク
ITUのIMT-2000に関するページ
NTTドコモによるIMT-2000の技術の解説
総務省の「第4世代移動通信システム」に関するリリース