総務省はこの6月,大学や通信事業者,機器ベンダーのメンバーで構成する「IPネットワークに関する研究会」を発足させ,“IP電話のための電話番号”を決める検討を始めた。12月までに報告書としてまとめるという。このIP電話のための電話番号とは何だろうか。

 現在,IP網で電話サービスを提供しているところはいくつかあるが,そこで使う電話番号は,固定電話や携帯電話に割り当てたもの。つまり,パソコン上のIP電話ソフトから固定電話や携帯電話を呼び出すことはできるものの,反対にパソコン上のIP電話ソフトを呼び出すことはできない。今回研究会が検討するIP電話のための電話番号とは,パソコンなどに搭載されているIP電話ソフトを呼び出すための電話番号のことである。

 電話番号について整理しておこう。電話番号はIPアドレスと同じように,全世界でユニークであるように体系立てて割り当てられている。国際的なルールとしてはITU-T(国際電気通信連合電気通信標準化部門)勧告のE.164とE.168があり,日本の番号体系もこれに従っている。

 E.164は,割り当ての詳細を国ごとに決める番号体系。基本条件は,先頭の1~3ケタが国名を識別する国番号であることと,全部で15ケタ以内であること。固定電話も携帯電話もフリーダイヤルも,このE.164に沿って割り当てた電話番号である。一方のE.168は国という枠組みを超えて利用するための番号体系。代表例としては,衛星電話サービスのイリジウム向け番号があった。

 IP電話の電話番号がどのような形に落ち着くかは予想しにくい。IP電話ソフトを搭載したパソコンは,自宅に置きっぱなしにしていることもあれば,外出先に持ち歩くこともあるからだ。もし地域別に割り当てるのが適切だと判断するなら固定電話形式になるし,機器やユーザーに割り当てるべきと考えるなら携帯電話形式となる。

 これとは別に,IP電話を一つのサービスだと見なせば,フリーダイヤル(0120)のような番号体系に割り当てるケースもあり得る。また,国という枠組みは外すべきという結論になれば,E.168に沿った新たな番号体系を国際的に作っていくことになる。さらに紹介した番号体系をいくつか併用することも考えられる。

 ともあれ,具体的な方針は年末に公開される予定の報告書に示されるはず。パソコンのIP電話ソフトで電話の着信を受け付けられるようになれば,電話の姿も大きく様変わりするだろう。その日は,確実に近づいているのである。

<日経NETWORK8月号では,IP電話向けの電話番号体系と,電話番号からIPアドレスを見つけだすインターネット技術「ENUM」(telephone number mapping)の最新動向を掲載しています。ぜひ,ご覧下さい>

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IPネットワークに関する研究会の開催資料