画像データに透かしを入れられるのをご存知だろうか。といっても,プリント・アウトして光にかざしても,透かしらしきものはもちろん見えない。ここで紹介するのは,著作権を保護するために見えないように刷り込んだディジタル・データ,いわゆる「電子透かし」のことである。

 電子透かしは,著作権があるディジタル・コンテンツが不正に使用されないように,そのコンテンツに埋め込んでおくデータのこと。インターネット上には,電子透かしを作成できる無料ソフトをダウンロードできるサイトがある(下のリンク参照)。もしあなたが自作の画像や音声をネット上に公開しているのなら,使ってみるのはいかがだろうか。

 電子透かしはどのようにして不正コピーを防ぐのか。まず,不正にコピーされたくないコンテンツに,電子透かしを入れておく。そのうえで,インターネットを通じてそのコンテンツを配信する。だれかがそのコンテンツを勝手にサーバーに公開したとしよう。そのコンテンツは,電子透かしとして著作権情報が書き込まれているので,著作権者はそれをみて自分のコンテンツが勝手に公開されていると判断できるのである。そこから先は,法的な手段ということになる。電子透かしは,公開の停止や損害賠償を請求する際の証拠となるわけだ。

 電子透かしの特徴は,データのフォーマットを変えても,著作権情報は失われないということ。例えば,電子透かしを埋め込んだJPEGフォーマットの画像を公開し,だれかがそのJPEG画像をダウンロードし,BMPフォーマットに変換したとしよう。それでも,電子透かしの情報は失われないのだ。これは,著作権情報を元データに添付するのではなく,元データ自体に埋め込むから。その上で,電子透かしを含んだデータは,見かけ上はまったく普通のデータに見える。例えば,電子透かしを入れたMP3の音楽は,一般のMP3プレーヤで聞くことができる。

 現段階でも電子透かしの要素技術はほぼ固まっている。ただ実際の利用はこれから。企業や業界団体はどう活用するかを模索している状況にある。

 ナップスターやグヌテラなど,音楽ファイルをタダで入手するファイル共有技術が著作権保護の観点から問題視されている。そうした不正コピーを見つけたり,阻止したりするための技術的手段が,電子透かしというわけだ。

高橋 健太郎

関連リンク
電子透かしツール・ベンダーの解説ページ
電子透かしを作成するツールの一覧表。無料のツールもある
電子透かしをわかりやすく説明したページもある