最近,メモリー・カード用スロットを備える携帯機器が増えている。音楽データをメモリー・カードに蓄積し,携帯型の音楽プレーヤとして使えるようにしているわけだ。しかし,メモリー・カード用スロットは音楽データのためだけのものではない。高速通信カードがデビューを待っているからだ。

 メモリー・カードの種類はいろいろだが,携帯電話が内蔵できるほど小さなものは少ない。実際の製品を見てみると,「メモリースティック」と「SDメモリーカード」のどちらかだ。メモリースティックは,ソニーが独自開発した小型メモリー・カード。21.5×50×2.8mmの細長いスティック状になっている。一方のSDメモリーカードは,松下電器産業,米サンディスク,東芝の3社が共同で開発した。3社は「SDアソシエーション」という団体を設立して仕様の標準化を進めている。サイズは24×32×2.1mm。メモリースティックより小さく薄い長方形のカードである。

 携帯機器が備えるメモリー・カード用スロットは,実はさまざまな種類のカードが使えるようになっている。PCカード・スロットと同じように,ピンの形状や電気信号を仕様に合わせれば,汎用の拡張スロットとして利用できる。ソニーは「メモリースティック拡張モジュール」,東芝は「SD I/O Card」という名称を使い,音楽データの蓄積とは別の用途向けに展開したい考えだ。その代表例が無線通信なのである。

 メモリー・カード用スロットに格納されそうな通信技術の一番手はBluetoothだ。Bluetoothは,10m以内の短距離通信向けの無線技術。その特徴は,短距離通信に割り切ったことで,大きなアンテナや増幅回路を不要にしたこと。メモリー・カード用スロットという小さなサイズにも納まる。

 実際,ソニーはメモリースティックと同じ形状のBluetoothモジュール「Infostick」を試作済み。小さなきょう体の中に,インタフェース回路,コントローラ,ベースバンド回路,RF回路,フラッシュ・メモリー,アンテナなどをすべて納めた。松下電器産業と東芝も,製品イメージではあるものの,Bluetooth対応SDメモリーカードを展示会に出展している。

 伝送速度の面から見ると,11Mビット/秒の無線LANを格納することも可能だ。カード・スロットのデータ転送速度が,どちらも11Mビット/秒を上回っているからだ。メモリースティックの最大のデータ転送速度は,書き込み時が1.5Mバイト/秒,読み出し時が2.45Mバイト。SDメモリーカードは,平均転送速度が2Mバイト/秒である。

 紹介した無線通信カードの販売時期はまだ見えていない。だが,無線通信カードが発売されれば,携帯機器だけでなく,家電のネットワーク化にも大きく貢献するはずだ。


高橋 健太郎

関連リンク

メモリースティックのページ(ソニー)
SDメモリーカードのページ(松下電器産業)
SDメモリーカードの技術的な特徴(東芝)