・LANとはブロードキャスト・フレームが届く範囲のことをいう。
・LANスイッチやハブは,ブロードキャストを通過させるので,
LANを構成するネットワーク機器である。
・ルーターはブロードキャストを遮断するので,LANを分割し,
LAN同士をつなぎ合わせる機器である。
普段,LAN(ラン)という言葉を口にする機会は多い。しかし,「具体的にLANとはなにか」と聞かれると答えに困る人も多いのではないだろうか。LANはlocal area networkの略。つまり,「狭い範囲のネットワーク」というのはわかる。では,具体的にどこまでの範囲のことなのだろうか。これを理解することが,LANを知る王道である。
フレームがどこまで届くか
LANといえば,イーサネットがその代表だ。イーサネットではMAC(マック)フレームという単位でデータをやりとりする。ここには,通信相手のあて先を表すMACアドレスが記述され,このMACアドレスによって目的の相手にMACフレームが届く。したがって,イーサネットのMACフレームがどこまで届くのかを考えればLANの範囲がわかる。
図 LANはブロードキャストが届く範囲のことだ ブロードキャストが届く範囲のことを「ブロードキャスト・ドメイン」と呼ぶ。これがLANの範囲だ。ハブとLANスイッチは,ブロードキャストを通過させるLAN機器。ルーターはブロードキャストを遮断する。このため,LANを分ける役割をする。 |
ハブとLANスイッチが対象機器
では,ネットワーク機器とLANの関係を見てみよう。機器としては,リピータ・ハブ(ハブ),LANスイッチ(スイッチング・ハブ),ルーターがある。
ハブは入ってきたMACフレームをすべてのポートへ送り出す。一方,LANスイッチはフレーム中のMACアドレスを認識して,フレームを送出すべきポートを判断して,特定のポートだけへMACフレームを送出する。
しかし,両者ともブロードキャスト・フレームが入ったときの動作は同じである。LANケーブルがつながるすべてのポートへブロードキャスト・フレームを送り出すのだ。したがって,ハブもLANスイッチも,LANの一部を構成する機器である。
ルーターでLAN同士をつなぐ
一方,ルーターはブロードキャスト・フレームを遮断する。つまり,LANの範囲を区切る装置なのだ。
ルーターはMACフレームの内容は無視して,すべてのフレームをいったん止める。そして,イーサネットよりも上位レイヤーのあて先(IPアドレスなど)を読み取り,受信フレームがどのLANに所属しているかを判断して,あて先のLANへ転送する。
また,LANスイッチが持つ「バーチャルLAN」という機能も,LANの範囲を区切る。通常のLANスイッチはすべてのポートを一つのブロードキャスト・ドメインとするが,バーチャルLANを使うと,ブロードキャスト・フレームが届く範囲を指定できる。この機能を使うことは事実上,LANを分割したことと同じになる。
LANを分割する理由
ブロードキャストの用途と,LANを分割する理由にも簡単に触れておこう。
ブロードキャストは,ある端末が通信先のコンピュータのMACアドレスを調べるときなどに使う。端末は,通信を始めるにあたって,LAN上にあるすべてのコンピュータに対して,「私が通信したいコンピュータのMACアドレスを教えて下さい」と問い合わせるのである。そして,対応する相手が「それは私です。MACアドレスはxxxです」と答えることで通信相手のMACアドレスがわかるのである。
ただ,LANにつながった端末の台数が増えてくると,この問い合わせによるブロードキャスト・フレームがひんぱんにLANを飛び交うことになる。LANの伝送容量にはかぎりがあるので,これが度を超せばMACアドレスを探すだけで,伝送路が飽和してしまう。こうした問題を解決するために,LANを分割するのである。