インターネットを使って無料で国内の電話機へ電話がかけられるサービスが登場した。サービスを始めたのは,インターネットテレフォン(サービス名は「ただTEL」)と,ぷうば(サービス名は「RiRiRi Phone」)。どちらもメンバー登録さえしておけば,通話のための特別な費用はかからない。早速,2社のWebサイトでメンバー登録し,通話を試してみた。

 操作方法はとても簡単。用意するのは,パソコンにつなぐマイクだけ。あとはいつものようにインターネットに接続し,画面上に表示されるダイヤル画面で相手先の電話番号をクリックするだけ。呼び出し音が鳴り出せば,あとは相手が出るのを待てばいい。

 使ってみた印象としては,友人や家族など,親しい間柄での通話なら支障なく通話できる。アクセス・ポイントまでの通信料と,インターネット接続事業者(プロバイダ)に支払うインターネット利用料は別途必要になるので,完全な無料電話とはいえないものの,長距離電話の代替手段として使えば料金的なメリットもある。

 だが,課題はある。

 第一に,ISDNルーターの標準機能となっているアドレス変換技術「NAT」(network address translation)を使っているときは利用できないこと。これは実際に通信に失敗して気がついた。宅内LANのパソコンで通話しようとしても,相手を呼び出せないのだ。調べたところ,インターネット電話はグローバルIPアドレスでなければ動かないことがわかった。筆者は,宅内LANにプライベートIPアドレスを割り当てている。ISDNルーターでプライベートIPアドレスをグローバルIPアドレスに変換するNATを働かせ,宅内LANからインターネットにアクセスしていたのだ。パソコンにモデムをつなぎ,電話回線でダイヤルアップ接続したところ,問題なく相手を呼び出せた。

 第二に,品質が安定していないこと。音質面だけでなく,接続性についても安定していない。東京から神奈川の固定電話へ電話をかけたみたところ,音質は携帯電話並かそれよりやや良いといった印象だ。ただ定期的に音が一瞬途切れるのが気になる。また,携帯電話との通話では遅延が大きかった。発した言葉が1秒くらい遅れて届く。接続したときの回線状況やトラフィック状況にも関係するだろうが,なめらかに会話できるとは言い難い。このほか,呼び出し処理に失敗することも少なくない。

 どちらのサービスもまだ試行段階にあるとはいえ,NAT環境で使えないことやいくつかの点で品質が安定していないことは,早急に改善すべき課題といえる。また,広告を見てもらうことで無料にするというビジネスが成り立つのかもはっきりしない。ただし,操作はとても簡単であり,使い勝手そのものは悪くない。技術的な課題を克服できるなら,手軽なインターネット・アプリケーションとして広がる可能性は十分ある。

半沢 智=日経NETWORK)

関連リンク

インターネットテレフォンの「ただTEL」
ぷうばの「RiRiRi Phone」