ノート・パソコンを会社から持ち帰り,自宅からインターネットにアクセスしようとブラウザを立ち上げる。ところが,スタート・ページがいつまでたっても開かない。「ああそうか,プロキシ・サーバーの設定を切り替えてなかったんだ」--。こんな経験はないだろうか。実は,このプロキシ切り替えを自動的に実行するしくみが最新のブラウザに備わっている。

 これまでプロキシの自動切り替えは専用のプロキシ切り替えツールを使って解決する方法が一般的だった。今回紹介するのは,Internet Explorer(IE)の最新版(バージョン5.0以上)が採用したもの。ネットワーク管理者がプロキシ・サーバーの設定ファイルを作っておく必要があるが,ユーザー側の設定は簡単だ。このしくみは,「WPAD」(Web Proxy Auto-Discovery protocol)と呼ぶプロトコルを使っている。

 WPADの説明を始める前に,ブラウザでプロキシ設定を自動化する一般的な手順をおさらいしておこう。ブラウザはもともと,プロキシ・サーバーの設定ファイルを読み込んで自分自身の設定に反映させる機能を備えている。設定ファイルはJavaスクリプトで記述されたもので,「.js」,「.jvs」,「.pac」(proxy auto-configuration)などの拡張子を付けておく。

 ただ,これまでこの機能はあまり使われていなかった。あらかじめ設定ファイルのありか(URL)をブラウザに登録しなければならないからだ。設定ファイルのありかがどこなのかは管理者に聞く必要があり,管理者はそのURLをユーザー全員に通知しなければならない。URLは,IEの場合は「ツール」-「インターネット オプション」-「接続」-「LANの設定」を,Netscape Navigator(NN)なら「編集」-「設定」-「詳細」-「プロキシ」を開いて登録する。

 WPADでは,DHCPサーバーやDNSサーバーの機能を活用して設定ファイルのありかをブラウザに通知する。ユーザーは前述のプロキシ設定で「設定を自動検出する」をチェックするだけでいい。

 DHCPサーバーを利用する方法は,DHCPサーバーにプロキシ設定用ファイルのURLを通知してもらうもの。DHCPサーバーは,ブラウザの問い合わせに応じてURLを通知する。管理者は,設定ファイルをどこかのWebサーバーに置き,そのURLをDHCPサーバーに登録すればよい。

 DNSを使うときは,設定ファイルを格納したWebサーバーに“WPAD”という固定的なホスト名を別名で名付け,それをDNSサーバーに登録する。このとき,設定ファイルは,「wpad.dat」という名称にしておく。IEは起動時に「http://wpad.ドメイン名/wpad.dat」というファイルを読み込むことになっている。

 多くのネットワーク管理者は,おそらく社内のユーザーがパソコンを新規導入するたびに「Webが見られない」という問い合わせを受けて困っているはず。プロキシ・サーバーを利用している企業の管理者は,WPADのおかげでユーザーの問い合わせを減らすことができるだろう。

斉藤 栄太郎=日経NETWORK)

関連リンク

WPADの仕様書。米インクトゥミや米マイクロソフト,米リアルネットワークス,米サン・マイクロシステムズの4社が共同で策定した