ディジタル信号の送り方には,パラレル伝送とシリアル伝送の2種類があります。「パラレル」は並列,「シリアル」は直列の意味です。装置内部ではパラレル伝送,装置間をつなぐ伝送路ではシリアル伝送がよく使われています。

パラレルは一度に,シリアルは1ビットずつ

 1つの文字(キャラクタ)を伝送するには,まずビット列に変換しなければなりません。アルファベットを使う英文は8ビット,かなや漢字を使う和文は16ビットで表します。

 このようなディジタル信号を伝送する場合,8本または16本の線を使って8ビットまたは16ビットを一度に送ってしまう方法と,1本の線で1ビットずつ順番に送る方法があります。前者がパラレル伝送,後者がシリアル伝送に当たります(pict.1[拡大表示])。

 8ビットあるいは16ビットで表されるキャラクタは,パラレルの状態でメモリーに入っています。これを1ビットずつ順番に取り出して並べると,シリアルの状態になります。

 シリアル伝送は,線の数が1本で済みます。ところが,送信側ではパラレルのデータをシリアルに変換し,受信側ではシリアルのデータをパラレルに戻してメモリーに入れなければなりません。これは少々面倒です。その一方,パラレル伝送は,メモリーに入っているデータをそのまま送れるので簡単です。その代わり,線の数が8本または16本必要になります。

 パラレル伝送とシリアル伝送は,こうした特徴を生かすように使い分けられています。パソコン内部のLSI同士や隣り合った装置をつなぐような短距離の伝送には,パラレル伝送が使われます。反対に,長距離の伝送にはシリアル伝送を使います。送信時と受信時にパラレル/シリアル変換のコストがかかっても,線の数を少なくすることで削減できるコストの方が上回るからです。最近は,シリアル伝送用のパラレル/シリアル変換LSIが安く入手できるようになったので,短い距離でもシリアル伝送が使われ始めています。通信の分野でみると,通信ネットワークにはシリアル伝送が,ディジタル交換機の内部のデータ伝送にはパラレル伝送が使われるのが一般的です。