最近のディジタル通信は,同期伝送と呼ばれる方法で通信します。同期伝送では,クロックと呼ばれるタイミング情報に合わせて,ディジタル信号を送信したり受信したりします。こうすることで,効率よく,正確にディジタル信号を送ることができます。

クォーツ発振器の誤差を修正

 ネットワーク機器は,同期をとるために「クロック」と呼ばれるタイミング情報をやりとりします。クロックは,一定の間隔でパルスの“1”と“0”を繰り返す信号です。その間隔は,周波数を表す単位「Hzヘルツ」で表されます。例えば,8kHzのクロックなら,1秒間を8000等分する信号ということです。

 同期伝送では,送信側がクロックに合わせて信号を送り出します。送信側と受信側で同じクロックを共有すれば,受信側も同じタイミングで信号を受信できます。こうすることで,信号を間違いなく判断できるようになります。

 端末や送信器,受信器などには水晶(クォーツ)の発振器が入っていて,カタログ上では同じ周波数を出すようになっています。ただし,実際には10万分の1くらいの誤差があって,それだけでは同期がとれているとはいえません。クロックを受けて発振器の周波数をぴったり合わせる必要があります。

 タイミング情報の伝達では,送信側から受信側へクロックを送ってタイミングを合わせる従属同期が使われます。ネットワーク内に基準となる発振器を置き,そこから各装置にクロックを分配して網全体の同期をとります(pict.2[拡大表示])。このようにして,同じ周波数で信号を送受信できるようにします。

 ディジタル交換機や多重化装置などに代表されるネットワーク内の各装置は現在,網同期で周波数を合わせています。パソコンや携帯電話などの端末は,これらのネットワーク装置からクロックを送ってもらって同期をとっています。

 なお,「同期がとれている」という表現は,必ずしも同じクロック周波数を共有していることを意味しません。片方のクロック周波数がもう一方の整数倍でも同期がとれていると言います。