オート・ネゴシエーション

接続相手の速度とモードを自動決定

 イーサネットには,10Mビット/秒,100Mビット/秒,1Gビット/秒の伝送速度があり,全2重通信と半2重通信の二つの伝送モードがある。機器同士は,必ず同じ伝送速度と伝送モード同士で接続しなければならず,速度やモードが違う場合は通信できない。

 そこで,LANスイッチをはじめとするイーサネット機器は,お互いの機器が相手の伝送速度とモードを判断し,適切な速度とモードを自動で選択する「オート・ネゴシエーション」を装備している。

機器同士がパルスで情報を交換

図3 速度と伝送モードを決める
接続した機器同士が,オート・ネゴシエーション機能を持っている場合は,お互いが適切なモードを選択する。片方がオート・ネゴシエーションでもう片方が固定モードの場合は,10Mビット/秒か100Mビット/秒の半二重モードで接続される。
 イーサネットで使うケーブルは,同軸ケーブル,より対線ケーブル,光ファイバの3種類がある。オート・ネゴシエーション機能はその中で,10BASE-Tや100BASE-TXなどのより対線ケーブルを使った時に機能する。10BASE-FLや100BASE-FXなどの,光ファイバを使う製品との認識はできない。

 オート・ネゴシエーション機能を持った100BASE-TX対応機器同士を接続した場合を見てみよう。まず機器同士を接続すると,互いの機器は「ファスト・リンク・パルス・バースト」(FLPバースト)と呼ばれる連続したパルスを送出する(図3[拡大表示])。

 FLPバーストは,10BASE-T対応機器が正常に動作していることを示す「ノーマル・リンク・パルス」(NLP)と同じタイミングで発生する。これは,10BASE-T対応機器がFLPバーストを受信しても,誤った信号と解釈しないようにするためである。

 FLPバーストは,33個のパルスによって構成されている。奇数番のパルスが,パルスのタイミングをとるクロック・パルス。偶数番のパルスがデータ・パルスである。データ・パルスの内容で,自分の機器が持つ伝送速度と伝送モードを相手側の機器に伝えるのである。

接続の種類は優先順位で決まる

 LANスイッチなどのオート・ネゴシエーション対応機器は,相手側の機器から同じパターンのバースト・パルスを一定の数受信した場合に,FLPバーストを正しく受け取ったと判断して伝送モードを選択する。

 お互いの機器が複数の伝送モードを備えている場合は,決められた優先順位から伝送モードを決定する。10Mビット/秒と100Mビット/秒のイーサネットの優先順位は,(1)100BASE-T2の全2重,(2)100BASE-TXの全2重,(3)100BASE-T2の半2重,(4)100BASE-T4の半2重,(5)100BASE-TXの半2重,(6)10BASE-Tの全2重,(7)10BASE-Tの半2重――の順番である。

片側だけオート・ネゴは半2重で接続

 片方の機器がオート・ネゴシエーションに対応していて,もう片方の機器がモード固定で接続した場合も,お互いの機器を同じモードで接続するように試みる。これを,「オート・ディテクト」と言う。

 オート・ネゴシエーションをサポートしていない機器の場合,お互いの機器を接続した後は,10BASE-Tの場合はNLPを,100BASE-TXの場合はアイドル信号を送出する。この二つの信号から伝送速度を判断する。

 ただし,これらの信号では全2重通信か半2重通信かは判断できない。よって,オート・ディテクト機能を使った場合は,10BASE-Tの半2重通信または100BASE-TXの半2重通信のどちらかで接続される。