「VMWare」(ブイエムウエア)というソフトをご存じだろうか。米VMWareが開発したAT互換機のエミュレータ・ソフトである。LinuxやWindows2000の上に仮想的なパソコン(AT互換機)環境を作ってくれるこのソフト,意外なことにネットワーク技術の習得に役立つのだ。

 VMWareでは,VMWare本体を動かすOSを「ホストOS」,その上の仮想マシンで動かすOSを「ゲストOS」と呼ぶ。ホストOSとしては,Windows2000とLinuxが利用できる。一方ゲストOSは,基本的にはAT互換機用のOSは何でも動く。ただし,GUIを使うOSの場合,専用のディスプレイ・ドライバを用意する必要がある。今のところ,FreeBSDとLinuxのX-Window用とWindows用のドライバが用意されている。

 VMWareは,99年後半ごろから日本でも盛り上がり始めた。最初に熱狂したのはLinuxユーザー。仕事の相手などからWordやPowerPointなどのWindowsアプリケーションのデータをもらったときでも,VMWareを使えばWindowsマシンを使わなくて済むからだ。

 また,Windows2000をメインで使っているユーザーにとっては,FreeBSDやLinuxの勉強用として重宝されている。VMWareを使えばLinuxをちょっと勉強するためだけに,わざわざ別なマシンを用意したり,複数のOSを切り替えて使う必要がなくなる。ゲストOSは,ホスト・マシン上では単なるファイルとして扱える。このためインストールした直後の状態を別に保存しておけば,そのあとゲストOSをどんなに無茶にいじっても簡単に元通りに戻せるのである。

 これまでもOSのエミュレータ・ソフトはあった。だがVMWareの完成度は驚くほど高い。OSの上で別のOSを動かすため,確かに処理速度は少しだけ遅くなる。だが,その点を除けば,ゲストOSは独立したマシンで動いているように扱える。ネットワーク機能を例にとれば,ホストOSとゲストOSは別のIPアドレスで動作するし,なんとMACアドレスまでも別々になる。これはVMWareがゲストOSごとにMACアドレスを割り当て,一つのLANカードを共同で使わせているためである。

 この特徴を活用したちょっと変わった使い方がネットワーク技術の習得だ。例えば,ゲストOSのLinux上でWebサーバー・ソフトを動かしながら,ホストOSのWindows2000からこの仮想Linuxマシンに不正アクセスを仕掛けることができる。続けて,この不正アクセスの様子を別のゲストOS上の侵入検知ツールで検出するといった実験もさらっとできてしまうのだ。簡単に説明したが,これを実際に目にすると感動モノだ。

 このほか,3台の仮想Linuxマシンを起動し,1台をファイアウォールにしてほかの2台でこれをはさんで通信するといった実験も手軽にできる。さすがに10台も20台も仮想マシンを立ち上げるのは無理だが,最近のパソコンであれば3,4台は十分使える。

 とにかく,このソフトの面白さは言葉だけでは説明しきれない。使ってみればすぐわかる。日ごろからいろいろなOSを使ってネットワークの勉強やちょっとした実験をしてみたいと考えている人は,検討してみてはいかがだろう。1カ月間試用できるので,ぜひダウンロードして使ってみることをお勧めしたい。

斉藤 栄太郎=日経NETWORK)

関連リンク

VMWareのWebサイトでは1カ月間無料の試用版がダウンロードできる
ターボリナックスの最新版には機能限定版のVMWareをバンドルしている
日本語のメーリングリストもある
個人でVMWareについて詳しく解説しているページもある(早稲田大学のあさり氏のページ)