大ヒットを記録した,ティム・バートン監督作「PLANET OF THE APES/猿の惑星」――。配給元の20世紀フォックス映画(東京都港区)で,この作品を担当した宣伝部の菅野陽介次長にネットを使ったプロモーションについて聞いた。

――Webプロモーションの効果は?
 観客動員数は9月15日までの1カ月半で,300万人を突破しました。我々の仕事は,本屋に例えれば“立ち読み”の体験をいかに提供するかが勝負どころです。米国本社では,過去に観客の34%がWebを見てから映画館に来たというデータがあるので,今回は日本でもWebを使った事前告知に力を入れました。
 自社サイト以外に,ゲームなどを盛り込んだ「saruonline.com」や,Yahoo!Japanと共同の期間限定サイトを開設しました。Yahoo!Japan内のサイトは,7月28日の公開日までの1カ月間で100万ページビューを獲得し,50代以上のユーザーも4分の1ほどいました。
 「映画サイト=コアなファン向け」という定説は過去のもの。インターネットは使える“マス媒体”だと実感しています。

――苦労した点はどこですか?
 厳しい制約の中でコンテンツの質を保つことです。
 米国本社は昔の「猿の惑星」の焼き直しと思われることを嫌い,強力なブランド管理体制を引きました。例えば,本社から供給する宣伝素材以外はイラストや写真を使うな,といった具合です。
 しかし我々には,猿の惑星についてあまり知らないユーザーをWebに引き付け,楽しませる必要がありました。そこで,自社サイトの外ではこっそり,別のかわいい猿のイラストを使ったゲームや占いを用意したわけです。結果として,女性の動員に大きく貢献したと思っています。
 ただし,Webは両刃の剣だとも感じました。クオリティーの低いコンテンツで期待を裏切ったら,お客は2度と振り向いてはくれません。一生懸命サイトに呼び込んでおきながら,結果としてお客を失う恐れはあります。ですから,いつも真剣勝負です。

(聞き手は本間純=日経ネットビジネス)