精度が粗いiモードでは位置情報を利用せず

図2●携帯電話の事業者によって位置情報の送信方法が違う
EZwebとJ-スカイは,基地局から位置情報を取得して送る。iモードは精度が粗いため,あらかじめPCで登録しておいた位置のどれかを指定する。

 EZwebとJ-スカイでは,Webページに特定のAPIを呼び出すタグを記述しておくことで,ユーザーやタクシーの位置情報を取得する(図2[拡大表示])。基地局の所在地を使って割り出した緯度と経度が,携帯電話からサイトに送られる。実際にユーザーがいる位置との誤差は場所によって違う。基地局が多い都心ではだいたい数百m。基地局が少ない地方では最大で数km程度である。

 しかし一方,iモード対応の携帯電話機で取得できる位置情報は,EZwebやJ-スカイのものよりも精度が粗い。iモードの位置情報を取得できる「オープンiエリア」仕様では,全国を482のエリアに分けたうちのどこかということだけが分かる。基地局の多い東京都心などでは,かなり細かい範囲まで絞り込めることもある。しかし,札幌市のように100万都市が単一エリアになっている例もある。タクシーの配車用としては使いにくい。

 そこでフットコールは,iモードのユーザーに対しては,あらかじめ,タクシーを呼び出す可能性のある場所を登録するという仕組みを準備している。パソコンでFootCallサイトにアクセスして,会社や自宅などの場所を5カ所登録できるようにする。タクシーを呼ぶときは,iモードでプルダウン・メニューから場所を選び送信することで,場所を指定する。2002年7月にも,タクシーの乗客はiモードでFootCallを使えるようになる。しかしタクシーは,いろいろな場所を動き回るため位置情報を登録するのが難しい。そのため,iモードには対応しないことになりそうだ。

タクシー会社はGPS併用で携帯電話料金を削減可能

図3●FootCallをASPとして使い,無線を使うシステムと連携する(大稲自動車)
ユーザーの場所を知るためにFootCallを使う。タクシーの位置情報はGPSと無線を使って取得する。
写真2●フットコール,大稲自動車,システムオリジンが共同開発しているシステム(開発中画面)
タクシーの位置情報はGPSを使って取得する。携帯電話で呼び出している顧客の位置は,フットコールのシステムを使って取得する。

 FootCallのシステムでは,ユーザーとタクシーがともに,携帯電話のブラウザを使って位置情報を送信する。ユーザーはタクシーを呼ぶときに1回だけ位置情報を送ればいいが,タクシーはそういかないことがある。空車状態のまま場所を移れば,位置情報を送り直す必要がある。そのため,携帯電話の通信コストがかさむ可能性がある。

 そこで,大稲自動車(本社:福岡市)では,タクシー側のコストをできるだけ低く抑えつつ,FootCallを使って乗客を獲得できるようにするシステムを導入した。GPS(全地球測位システム)を使った配車システムとFootCallを組み合わせるものである。

 固定電話でタクシーを呼び出した顧客については,ナンバー・ディスプレイと地図データベースを使って電話番号から呼び出した場所を特定し,タクシーを配車する。この仕組みを携帯電話へ拡張するために,FootCallの仕組みを採用した。このシステムは大稲自動車,タクシー業務用のソフトウエアを開発するシステムオリジン(本社:静岡県清水市)とフットコールが提携し,共同で開発した。

 本来のFootCallサイトと違うのは,空車タクシーの検索はタクシー会社で実行するところ(図3[拡大表示])。大稲自動車は,FootCallの仕組みのうち,乗客の位置情報を取得する部分をASP的に利用している形になる。当然のことながら,配車の対象となるのはすべて自社のタクシーとなる。そのため,大稲自動車は,FootCallサイトとは別に,営業区域内の企業や個人を会員とする専用サイトを開設する。

 会員ユーザーがこのサイトにアクセスすると,FootCallのシステムによって位置情報が大稲自動車に送られる。一方,タクシーの位置情報はGPSを使って取得する。タクシー会社では,ユーザーの位置情報から近くにいるタクシーを検索して,無線で現場に向かうよう指示をする(写真2)。もし,ユーザーが大稲自動車の営業エリア外でタクシーを呼び出したら,FootCallサイトのタクシー位置検索機能を使って近くにいる他社のタクシーを探し出す。

 大稲自動車がFootCallの仕組み全部は使わず,タクシーの位置情報の取得にGPSを使うのは,携帯電話とGPSのランニング・コストが違うからである。「携帯電話を使うと1台ごとに基本料と通信費がかかるが,GPSと無線を組み合わせたシステムだと年間4万円から5万円で済む」と大稲自動車 代表取締役の稲員 英一郎氏は解説する。共同で開発したシステムは,2002年8月にもまず大稲自動車で稼働を始める。フットコールによると,ほかにも2社導入を検討しているタクシー会社があるという。

 タクシーの運転手にとって,乗客を探すたびに手動で位置情報を送るのは手間がかかる。フットコールは今後,タクシーの運転手に向け,一定時間ごとに現在位置を取得して送信するJavaアプリを提供する。8月にも,まずJ-スカイの携帯電話に対応させる。