フットコールは,携帯電話の位置情報を取得する機能を使って近くにいるタクシーを呼び出せるサイトを構築。2001年9月にサービスを始めた。その後対応する携帯電話を増やしている。しかし,中には,iモードのように取得できる位置情報の精度が低いものもある。そこで,あらかじめ場所を指定する仕組みを追加して対応する。また,GPSを使ってタクシーの位置を取得する既存の仕組みと連携できるシステムを,提携する各社と共同で開発した。

(山崎 洋一=yyamazak@nikkeibp.co.jp)

写真1●「FootCall」サービスの利用画面には,ユーザーの同意が必要
位置情報をサイトに送る(左)。クレジット・カードを使える,車椅子に対応するといった条件指定も可能。
図1●FootCallは,携帯電話の位置情報を利用して近くにいるタクシーを呼び出せるサービス
タクシー会社の連絡先を知らなくても,携帯電話を使える範囲ならどこでも利用できる。

 フットコールが運営する「FootCall」は,携帯電話を使って近くにいるタクシーを呼び出せるサイトである。携帯電話を使える場所であれば,全国どこからでもこのサイトにアクセスして同じ操作をすることで,近くにいるタクシーを呼び出せる。

 駅前や繁華街のようにどこでもタクシーを簡単に呼べる地域ばかりではない。実際,携帯電話で近くのタクシーを呼び出すというアイデアは,フットコールの代表取締役である豐川 博圭氏が,会社を設立する前の新聞記者時代に考案したものである。「地方の支局に勤務していたときに,郊外にある研究機関などに出向いた際,行きは駅前から簡単に乗車できるが,帰りには,タクシーをどうやって呼び出したらいいかわからないことがよくあった」(豐川氏)という。

 タクシーとタクシーを呼び出している顧客の位置を知るには,携帯電話の位置情報を取得する機能を使う。これは,携帯電話が基地局の所在地を基に現在位置を割り出して,Webサイトに送信する機能である。取得できる位置情報の誤差は,地域によるが数百mから数kmの範囲。FootCallは,ユーザーとタクシーの携帯電話機から送られてきたおよその場所をもとに,ユーザーがいる場所まで5分程度で行けるタクシーがいないか探し出す。

 タクシーを呼び出したいユーザーは,FootCallサイトにアクセス(写真1)する。メニューに従い操作すると,ユーザーの同意を得て,ユーザーの位置情報がサイトに送信される。クレジット・カードが使える,車椅子に対応するといった条件を指定することもできる。タクシーの運転手も,やはり携帯電話を使って位置を送っておく。

 ユーザーの近くにタクシーがいた場合,FootCallはユーザーの携帯電話のブラウザにタクシーの携帯電話の番号を送信する。ユーザーは電話で運転手と連絡を取って迎えに来てもらう(図1[拡大表示])。近くにいなかった場合は,ユーザーがFootCallでタクシーを呼んだ場所を営業エリアに持つタクシー会社の電話番号が表示される。これは電話帳のようなもので,あらかじめFootCallに登録してあるものを表示している。

 同社のサービスは2001年9月にKDDIの「EZweb」の位置情報に対応する携帯電話を対象に開始。2002年4月にはJ-フォンの「J-スカイ」の位置情報対応機種でも使えるようになった。だが,NTTドコモの「iモード」の場合は,場所によっては,複数の市町村にまたがるような粗い位置情報しか得られないこともある。

 そこで,FootCallでは,あらかじめ,タクシーを呼び出すことが多い場所をパソコンを使って登録しておく仕組みを準備している。iモードで登録した場所を選べばタクシーを呼び出せる。

 ユーザーの利用料金は無料。タクシーは1台につき月額1980円かかる(課金は2003年から)。7月上旬現在,FootCallに登録しているタクシーが70台。近くにタクシーがいる可能性はまだ低い。だが,フットコールではJ-スカイとiモードに対応機種を広げたことでユーザーとタクシーがともに増えると予想している。2002年中にタクシー5000台,ユーザー10万人を目指すという。

高速で拡張性の高いシステムを

 FootCallのシステムは,大まかには地理情報システムとインターネット・システム部分に分かれる。そのため,地理情報システムの開発・販売を手掛けるコボプランと,インターネット・システム構築やプロバイダ事業を手掛ける知識情報技術研究所が共同で構築した。まず,豐川氏は,地理情報システムを得意とする企業へ商談を持ち込んだ。20社以上と話をしてみた中にコボプランが含まれていた。コボプランが旧知の間柄にあった知識情報技術研究所と連携してシステム構築を担当してくれるなどの理由から,システム開発を委託することにしたのである。コボプランは,ユーザーとタクシーとをマッチングさせる地理的条件を設計。ネットワーク・システム構築とサーバーの運用は,知識情報技術研究所が担当している。

 FootCallのシステムは,全国の地理情報を一定範囲の「セル」に分割して持つ。そして,ユーザーのいる場所(緯度・経度で表現)を含むセルと同じかまたは近隣のセルに,タクシーがいるかどうかを検索する。

 知識情報技術研究所は,システム開発にあたり,高速に検索処理ができることを目指した。静的なページを切り替えるのと変わらない速度で,結果をユーザーの携帯電話のブラウザに表示できるという。検索に時間がかかれば,その間のセッション維持などのためサーバーに負担がかかる。いち早く処理結果をユーザーに返すことで,トータルでのサーバーへの負荷をできるだけ軽減するための工夫だという。

 高速化のため,データベースはハード・ディスク上に持たず,サーバー・マシンのメモリー上でマッチング処理をしてしまう。ユーザーのデータとタクシーのデータを,サーバー・マシンのメモリー上に展開。これらの処理を,1Gバイトのメモリーと米インテルのCeleron 800MHzを搭載したLinuxマシン1台で実施している。

 また,将来の拡張など変更に対応しやすくするため,Webアプリケーションの開発にはJavaを利用。Linux上でオープン・ソースのアプリケーション・サーバー「Enhydra」を稼働させ,その上でアプリケーションを動かしている。