効率的なピーク対策を目指した

写真2●超割発売時のアクセス数のピーク
写真はアカマイがユーザーに対して提供する統計データで,2002年2月12日に超割チケットを発売したときのもの。最高で約750ヒット/秒(4万5000ヒット/分)に達しているのがわかる。EdgeSuite導入以前には,このトラフィックがすべてANAのWebサイトに集中した

 こうした取り組みの結果,システム的な対策にはメドがついた。2000年から2001年には,アクセス数の増減の割合もほぼ落ち着いてきたかに見えた。そんな矢先,かつてないほどのアクセス増に見まわれた(写真2)。

 超割チケットを発売すると,冒頭に述べたように1分当たり5万件ものアクセスが発生。当然,レスポンスは劣化した。直接の原因は,外部に出していたGIFファイル配信用のWebサーバーの過負荷。同社は99年から米アジレント・テクノロジのWebパフォーマンス監視ツール「Firehunter」を使ってサイトの性能測定を実施してきたが,その測定結果でも,1つのページを取得するのにかかった時間は平均して20~30秒だった。

 実際には予約処理の要求も急激に増えていたが,それ以前に,トップ・ページがなかなかユーザーのPCに表示されない。アクセスを受けきれないため,タイムアウトによるエラーも頻発。混雑時に予約処理をすぐに実行できない場合には「お待たせページ」に転送する仕組みを設けていたが,そこへの転送もエラーになってしまうありさまである。GIFファイル配信サーバーのリソースを調べてみると,「CPU負荷がほぼ100%に張り付いたままの状態だった」(川浪氏)。

 対策として,ホスティング・サービスを利用しているGIFファイル配信サーバーを増設すれば問題は解決できる。ロード・バランサを導入しているため,サーバーのスケール・アウトは容易だ。実際,従来のアクセス増にもそのように対応してきた。

 ただ,この増設に伴ってホスティング料金のアップは避けられない。しかも,その料金は,超割チケット発売時という,ほんの短い期間のピーク・トラフィックへの対策でしかない。今後トラフィックが増えれば,このコストはますます膨らんでしまう。

 そんな折,ちょうど日本でサービスを展開し始めたアカマイからアプローチがあった。話を聞いてみると,効果は期待できそうだ。料金も,従来のままサーバーを増設していた場合のホスティング料金と遜色なかった。

 2001年秋には,アカマイのサービスをテスト導入。以後,超割チケット発売時にも,応答率100%,レスポンスは平均して数秒という安定した性能を実現できた。それでも,一番混雑する時間帯には,メインフレーム側の処理が追いつかない場合がある。ただ,こうした場合には100%の応答率でお待たせページが返信される。これもEdgeSuiteの効果だ。こうして,2002年1月の正式導入に至った。

静的コンテンツをキャッシュ

 アカマイのEdgeSuiteを利用するためにANAが実施したことはDNS(ドメイン名システム)サーバーの設定変更。ANAのDNSサーバーに,Webサイトのアドレス検索要求があると,接続先のサイトのアドレスとしてアカマイのエッジ・サーバーのアドレスを返信する。もちろん,それぞれのユーザーから最寄りと思われるエッジ・サーバーが自動的に選ばれる。

 アカマイ側には,HTMLファイルとGIFファイルがほぼすべてキャッシュされている。もちろん,EdgeSuiteでキャッシュできるのは静的なコンテンツだけ。予約処理などCGIを利用するページについては,従来通り,ANAのサイトでアクセスを受け付けている。

 キャッシュされるコンテンツの有効期限はすべて10分間に設定した。トップページなどは,場合によっては1日に数回変更されることがある。できるだけコンテンツの新鮮さを維持するために10分ごとにキャッシュされたコンテンツが廃棄されるようにした。結果として,オリジナル・サーバーへのアクセス数は激減。予約処理などを除けば,同社のWebサイトはキャッシュを更新するためのアクセスを,10分に1回ずつ受け付けるだけ。サイトのレスポンスと同時に,システムにかかるコスト効率も向上させた。

 実は,同社はこのほかにも,SSL(セキュア・ソケット・レイヤー)に対応したWebサーバーを運用している。「ANAマイレージクラブ」の会員向けにパーソナライズされたページ,決済用のページ,国際線など一部の予約サービス,そして会員登録用のページなどはすべてSSLを使う。今後は,SSL対応ページについても,アカマイのサービスを利用することを考えている。