組み立てたPCも3次元的に

写真2●ビューポイントのWeb3D技術でPCを表示
カスタム・オーダーする製品構成を3次元的に表示できるので,イメージがつかみやすい。

 #orderconfは2001年8月末にサービスを開始した。ただし,1つ問題があった。部品をリストとして表示する方法では,その部品がどのような形状をしているか分からない。「実際に組み立ててみないと,形状やサイズが合っているかわからない顧客も多い」(ぷらっとホーム情報システム部の伊藤 剛氏)。実店舗のように商品を直接見ることができないため,ユーザーが想像していたのとは違う商品だった,というケースも出てきた。

 これを解決するために,Web3D技術を取り入れることにした。Webブラウザ上で3次元的に表示した部品を使って疑似的にPCを組み立てるので,実店舗に足を運んでもらわなくても,実際の商品のイメージをつかんでもらえる。スロット数やボードの大きさなども3次元的に表現できるので,せっかく購入したパーツが組み込めないといった不具合が減る。

 Web3Dは,ブラウザ上に3次元的なオブジェクトを表示する技術である。マウスなどの操作で,オブジェクトを自由に回転させたり,拡大縮小することができる。単なる画像よりも直感的に理解しやすい。

 ぷらっとホームは現在国内で利用可能なWeb3D技術の中から米ビューポイントの「Viewpoint」を選んだ。理由はいくつかある。1つは,動作が軽いこと。画像圧縮率が高く,きめ細かい3次元オブジェクトを小さなサイズで作成できる。「ナローバンドのユーザーもまだ多い」(伊藤氏)ので,コンテンツはなるべく小さくしたかった。組み立て後のPCの3次元オブジェクトは100Kバイト前後である。

 顧客が,組み立てたPCを詳しく調べるための機能も欠かせない。Viewpointならば,PCのケースを半透明にして表示したり,あたかもPCの内部に入り込んだかのように見せることも可能だった(写真2)。

Web3DでPCを組み立てる

図2●ViewPointはXMLファイルでオブジェクトやファイルをコントロールする
コンテンツへの変更はXMLファイルを修正するだけで済む。サーバー・アプリケーションやCGIで動的に変更できる。
写真3●Web3Dで表示したオブジェクトはマウスで自在に操作できる
[図をクリックすると拡大表示]

 Viewpointを選んだもう1つの決め手は,3次元オブジェクトとそれを動かす定義ファイルを,別々に持たせることができるところだった。

 #orderconfは,オーダーメイドのPCを販売するWebサイトである。そこで取り扱う部品は多数あるため,それらを組み合わせたPCのパターンは数え切れない。したがって,組み立て後のPCの3次元オブジェクトをあらかじめ作成しておくというアプローチは現実的ではなかった。ユーザーが組み上げたPCを3次元オブジェクトとして動的に生成する機能が不可欠だった。

 Viewpointを選んだのは,この機能を備えていたからである。Viewpointは3次元オブジェクトの表示角度や,クリック時の振る舞いなどを,XMLファイル内に保持している。そのため,これらをエディタやアプリケーションで修正すれば,容易に3次元コンテンツの動きを変更できる。複数の部品を組み合わせた3次元オブジェクトを作る際に,サーバー側で,ユーザーが指定した部品の組み合わせに対応するようにXMLファイルを生成すればよい。「ほかのWeb3D技術のように,3次元オブジェクトから作り直すといった作業はせずに済む」(ビューポイント・ジャパン ビジネス開発部長の山形 康弘氏)。

 Viewpointのコンテンツは,3次元オブジェクトを格納するMTSファイル,オブジェクトを定義するMTXファイル,Viewpointコンテンツをインターネット上に公開するために必要なライセンス・キーを格納するbkey.txtファイルの3種類で構成されている(図2[拡大表示])。Viewpointでは,音楽ファイルやFlashを呼び出して同じブラウザ上で再生できる。その場合は,それらのファイルも一緒にダウンロードする。

 このうち,MTXファイルがXMLで記述されたファイルである。その中に,必要な独自のタグセットを組み込んでいく。例えば,オブジェクトの大きさを1/2にしたい場合,MTSInstanceのTransformタグ内に<Scale x="0.5" y="0.5" z="0.5" />を記述する。Viewpointのプレーヤは,MTXファイル内のこれらのタグを読み込んで,MTSファイルをコントロールする。

動的に3次元コンテンツを生成

 #orderconfのViewpointコンテンツは,イニット(本社・東京)に委託して作成した。手順はこうだ。まず,PC部品のディジタル写真をとる。それをオートデスクの「3D Studio MAX」などの3次元グラフィックス作成ツールに取り込み,3次元的なオブジェクトを作成,アニメーション時の動きをつける。その後,Viewpoint形式に変換する。次にテキスト・エディタなどでMTXファイルを作成する。「数十点の部品を3Dコンテンツ化するのには1週間もあれば十分」(伊藤氏)だった。

 各部品の3次元オブジェクトだけではなく,それらを複数組み合わせたPCの3次元オブジェクトを表示することも必要である。顧客が好みの部品を選ぶと,サーバー側のアプリケーションがそれに合わせて個々の部品のMTXファイルをマージし,組み立てたPCのMTXファイルを生成する。1つのMTXファイルで複数部品をコントロールする。「オーサリング情報を動的に生成できることがViewpointを選択した理由」(イニット専務の冨岡 勝利氏)である。

 #orderconfの注文数は,毎月200台程度にまで伸びている。オリジナル・ブランドのPCに並ぶ注文数である。3次元表示機能は10月に始めたばかりだが,サイトのアクセス数アップにつながっている。「成約率の向上が期待できる。返品なども減るはず」(ぷらっとホームの鈴木氏)と見る。