NTTコミュニケーションズが6月11日に立ち上げた「ShareStage」。数万人規模のアクセスを想定する情報共有のためのWebサイトである。短期間での構築を可能にするため,それぞれが得意分野をもつ6社で作業を分担した。Javaアプリケーション・サーバーを導入し,既製のJavaコンポーネントを利用して生産性を上げた。システムはファイアウォールから負荷分散装置,ストレージに至るまで2重化し,サービスの停止を防いでいる。

(福田 崇男=tafukuda@nikkeibp.co.jp)

 大規模なアクセスが予想されるWebサイトを,短期間で構築したい。そのために,得意分野の異なる複数企業が作業を分担し,Javaや負荷分散装置,SAN(ストレージ・エリア・ネットワーク)/NAS(ネットワーク・アタッチト・ストレージ)といった技術を駆使してシステムを構築する――。NTTコミュニケーションズが6月11日に立ち上げた情報共有サービス「ShareStage」(写真1)である。

写真1●NTTコミュニケーションズの「ShareStage」

 ShareStageは,ユーザーのもつファイルやブックマークなどをインターネット上にあるサーバーに保存し,グループ間で共有するためのサービス。

 このシステム構築には,サービス提供元であるNTTコミュニケーションズのほか,日立ソフトウェアエンジニアリング(日立ソフト)など5社が参加した。それぞれ,ネットワーク設計,アプリケーション開発,ユーザー・インタフェース設計といった形で作業を分担した。各社が同時進行で作業を進めたことで,約6カ月という短い期間でサービス立ち上げにこぎつけた。

 システム面では,十分な処理性能と信頼性を提供するために,J2EE(Java2 プラットフォーム,エンタープライズ版)対応のWebアプリケーション・サーバーを導入し,ファイウォールや負荷分散装置,ストレージなどすべてを2重化した。インターネットとは,1ギガビット/秒で接続し,大規模アクセスに備える。

 アプリケーション開発では,既存のJavaコンポーネント(ソフト部品)を利用したり,Javaプログラムを生成するツールを使って生産性を高めた。

Webサーバー上で情報共有

 ShareStageのプロジェクトがスタートしたのは2000年12月頃。「ブロードバンド向けのサービスを何か考えられないか,ということで検討を始めた」(NTTコミュニケーションズ 経営企画部の中尾 公氏)。

 ShareStageは,ファイルやブックマークをサーバー上に保存し,それをグループで共有するサービスである。50Mバイトまでは無料で利用でき,それ以上の容量を使うときは50Mバイトごとに月額390円の利用料金がかかる。ファイルのアップロードなどは,すべてWebブラウザで実行できる。

 「オートログイン」と呼ぶ機能も1つの特徴である。ECサイトやポータル・サイトではユーザーIDとパスワードの入力を求められる場合が多いが,それをあらかじめShareStageに登録しておくと,そのサイトに移動する際に,自動的にユーザーIDとパスワードを入力してくれる。

 ユーザーとして,当初から中央大学が利用することが決まっており,2001年6月にサービスを開始した。最終的には,3万人の学生にユーザーIDを付与する予定である。

ユーザー・テストでWebページを改善

表1●NTTコミュニケーションズの「ShareStage」の開発に携わった企業

 ShareStageの開発には,日立ソフト,ワイヤーアクション,デュオシステムズ,データクラフトジャパン,ビジネス・アーキテクツの5社が参加した(表1[拡大表示])。

 日立ソフトは,システム開発のプロジェクト管理とWebアプリケーション開発の取りまとめを行った。同社がアプリケーション設計に取り掛かったのは,今年1月のことである。

 しかし,第一号ユーザーである中央大学から,2月に試験的に学生や教職員に利用させたいという要望があった。サービス内容や操作性を検証するためである。アプリケーションは,まだJavaのクラス設計の段階だった。

 そこで,「テスト用に,1カ月程度をかけてサーブレット・ベースのアプリケーションを開発した」(日立ソフト ネットワーク本部ネットワーク第2設計部の堀田 匡哉氏)。最終的には主にEJB(エンタープライズJavaBeans)を用いてアプリケーションを開発したので,テスト用のアプリケーションとは異なる。機能やユーザー・インタフェースの評価をした後は,すべて破棄した。

 テスト・サービスでは,実際に学生や教職員に利用してもらい,感想を記入してもらったり,グループ・インタビューで直接話を聞いた。「厳しい意見をたくさんもらった」(NTTコミュニケーションズの中尾氏)という。例えば,ファイルやフォルダのアクセス権を設定する画面。UNIXのように細かい設定ができるWebページを用意したが,よくわからないと不評だった。そこで,機能を絞った単純なページに変更した。細かいアクセス制御は,必要な人だけが選択できるようにメニューを変更した。

 このほか,さまざまな機能を1つのWebページに表示するために苦労した。「画面構成に1カ月くらい費やした」(NTTコミュニケーションズ経営企画部の竹内 成和氏)という。画面のデザインや構成はビジネス・アーキテクツが担当した。


次回(下)へ続く