SSLの処理が遅い

 千趣会は,NTTコムウェアからアドバイスを受け,3通りの測定シナリオを作成し,bellne.comのレスポンス時間をテスト測定することにした。(1)トップページにアクセスするところから,千趣会カタログに掲載されている商品の注文番号を直接入力して注文し終えるまで,(2)トップページにアクセスするところから,商品をブラウズして検索し注文し終えるまで,(3)bellne.comで千趣会カタログの取り寄せの要求操作を終えるまで──である。3つのシナリオそれぞれについて1時間間隔で測定する。

 テスト測定の結果,ボトルネックが1つ見つかった。「3月に1週間程度測定したところ,URLがhttpから始まるフレームは表示までに時間がかかっておらず,httpsから始まるフレームに時間がかかっていた。その他のページのレスポンス時間も分析した結果,SSLを使用するページに問題があるのではないかという結論に達した」(NTTコムウェア サービス本部 サービス・プロバイダ部の土屋 晃一氏)。

 千趣会では,「以前にシステムの保守を担当する業者から,SSLアクセラレータを入れてはどうかとの提案もあったため,SSLアクセラレータの導入を決定した」(星野氏)。SSLアクセラレータは5月下旬に導入され,稼働を開始した。

 SiteAngelは2001年5月から正式にサービスを開始し,bellne.comの継続測定もこの時点から開始された。

アクセス増とのいたちごっこ

 2000年末のレスポンス低下以来,システム増強や予防策の確立を実施してきたが,5月にSiteAngelによる測定が始まり,SSLアクセラレータを導入したところでシステム増強は一段落した。SSLアクセラレータ導入直前の5月23日,SiteAngelで「トップページにアクセスするところから,千趣会カタログに掲載されている商品の注文番号を直接入力して注文し終えるまで」のシナリオを測定した時間は218秒だった。これが,SSLアクセラレータ導入後の6月1日には176秒に短縮され,成果も出た。

 一方で,5月最終週に,bellne.comはこれまで以上の規模のアクセス増に直面した。全国紙に折り込み広告を計数千万部規模で打ったところ,1日のアクセス数が通常の倍になった。トランザクションもそれに伴い増加し,データベース・サーバーのCPU使用率が100%になることがしばしばという状態になってしまったのである。

 アクセス数は数日で通常の状態に戻ったが,2000年末以降増強してきたシステムでは追いつかない状況に直面したため,早くもさらなるシステム増強を検討する必要が出てきた。

不測の事態へ迅速に対処

 今後の課題は,予期しないアクセス増にもある程度耐えられるサイトの構築,それからサイトのパフォーマンスが落ちたときに迅速に復旧できる体制作りである。

 アクセス増が続く限り,システム増強は続く。5月のパフォーマンス低下の経験を踏まえて,早速データベース・サーバーのCPU増設(450MHz×2基から600MHz×4基)を決定した。また,アクセス増に備え,Webサーバーを増設することにした。さらにデータベース・サーバーをアップグレードする方向で検討を始め,年内に実施する予定である。

 正式に測定を始めて間もないSiteAngelの活用方法の検討も課題のひとつ。異常発生時に迅速な対応をするために,まだ決まっていないアラート・メールの受信者を検討中である。また,測定シナリオの増加や測定間隔の短縮も視野に入れている。


問い合わせメールの回答時間を短縮

図A●eGainによるメール・サポートの概要
eGainサーバーの中で「どの社員が回答を作成中なのか」を示す属性を移動させ,メール対応処理を割り振る。メール・サポート担当者と管理職は,現在対応中の社員や,問い合わせ到着後の日数を把握できる。

 bellne.com開始当初,顧客からのメールによる問い合わせに対して,1人のメール処理担当者が普通のメール・ソフトを使い対応していた。当時のメールによる問い合わせは,1日に30件ほどで,メールを受信し振り分ける作業は9時から17時までの間に実施していた。

 メールは各部署の社員に転送し回答してもらっていた。ところが,他部署の社員に転送した場合,現在誰が対応中か分かりにくい,回答済みかどうか分かりにくい,などの問題があった。また,問い合わせ件数が増えてきたため,メール処理担当者をすぐに2人に増員した。しかし,顧客からのどのような問い合わせがあったのか,お互いのメール・ソフトに対してメールを検索しなくてはならなかった。

 そこで2000年8月,NTTコムウェアが販売するメッセージ管理ソリューション「eGain」を導入した(図A[拡大表示])。顧客からのメール・メッセージの処理状況を追跡し,回答が終了したかどうか,終了していない場合は,今どの担当者にあるのかが把握できる。また,同じ顧客が過去に問い合わせてきた内容をメッセージに添付するため,返答を作成しやすい。

 メールの処理状況を把握できるため,千趣会はメール処理の一部をアウトソースした。その結果,夜間(21時まで)や休日のメール対応が可能になり,回答までの期間が短縮された。2001年6月現在,社内10人とアウトソース先10人の計20人のメール処理担当者が,1日に約200件の問い合わせメールに対応している。