NTTドコモが,バーコード読み取り機能を搭載したカメラ付き携帯電話機を発売した。印刷物に掲載されたバーコードを写すだけで,携帯サイトに接続できる。慣れないとキー入力が難しいという弱点を補う効果がある。外付けタイプの読み取り装置との組み合わせで始まっているカタログ通販や業務効率化への応用に,拍車をかけそうだ。

(実森 仁志=hjitsumo@nikkeibp.co.jp)

写真1●NTTドコモの携帯電話機「SH505i」はバーコード読み取り機能を搭載
505iシリーズでは,シャープ製の端末のほかには,富士通とパナソニックモバイルコミュニケーションズがバーコード読み取り機能をサポートする予定。それ以外のメーカーは505iSシリーズで対応する。
 バーコード読み取り機能の普及をけん引するのが,カメラ付き携帯電話機だ。4月にNTTドコモが機種共通の技術仕様を公開。6月には,同仕様に基づく初めての端末「SH505i」を発売した(写真1[拡大表示])。ドコモはさらに,505iシリーズの2機種と,年末に投入する見通しの「505iS」シリーズの全機種で,この機能をサポートする。

数千文字分の2次元コードにも対応

 ドコモの端末は,国内の流通商品の大半に印刷された「JAN(日本商品番号)コード」と,今後普及が見込まれる「QR(高速応答)コード 」を読み取れる。読み取り内容に応じて,電話をかける,電子メールを送る,HTTP接続するなどが可能。読み取り機能を利用したJavaアプリケーションを開発すれば,活用の幅はさらに広がる。

 ほぼ同様の機能は,J-フォンの携帯電話機が2002年にサポート済み。ただし,端末メーカーが独自仕様で実装したもので,Javaアプリから機能を呼び出すための仕様も非公開だった。

 ドコモが本腰を入れてサポートしたことで,「ほかの携帯電話事業者も機種共通の技術仕様を策定し,搭載機の拡充に乗り出す」(携帯向けにバーコード認識ソフトを開発したメディアシーク社長の西尾 直紀氏)見込みだ。

 対応端末の普及を先取りするように,携帯とバーコード読み取りを活用した事例が増えている(表1[拡大表示])。

商品やサービスのサイトに誘導

 ダイヤモンド社は7月,新雑誌「ダイヤモンド コンパス」と連携した携帯サイトの運用を始めた。雑誌で紹介した商品やサービスの詳細情報や,読者が寄せた口コミ情報などを提供するサイトである。市販商品の評価情報提供サイトを運営するパワー・トゥ・ザ・ピープルとの共同事業だ。

表1●携帯電話機とバーコード読み取り機能を活用した事例が増えてきた

 このサイトへのアクセスを容易にするのに,ドコモ端末が搭載するバーコード読み取り機能を利用する。雑誌には,紹介した商品などの詳細情報を掲載したサイトのURLを,QRコードで印刷してある。携帯のカメラでQRコードを読み取ると,自動的にサイトに接続し,該当ページが表示される。「何度もキーを押さないと情報にたどり着けないようでは,使ってもらえない」(編集統括の田代 真人氏)。

 サイト上では,商品情報だけでなく,読者から寄せられた口コミ情報も提供する。JANコードと組み合わせれば,「店頭で商品のコードを読み取り,利用者の声を確かめるような使い方もできる」(田代氏)。雑誌は500円で,口コミ情報の閲覧は月額200円。11月には,商品購入にも対応する予定だ。

外付けタイプの活用が先行

写真2●阪急キッチンエールは生鮮品宅配サービスの発注に使えるようにした
7000人を超える会員のうち,5%程度が携帯電話機と外付けバーコード読み取り装置の組み合わせで発注する。

 ただし,バーコードを読み取れるカメラ付き携帯が普及するには,まだ時間がかかる。また,現在は「読み取り速度が遅く,連続した読み取りに向かない」(NTTドコモの法人営業本部 システム推進部 ソリューションマーケティング第三担当でソリューションアドバイザーの篠原 昭仁氏)。そこで今のところ,外付けのバーコード読み取り装置を活用する企業が多い。

 関西地方でスーパー・マーケットを展開する阪急キッチンエールは,生鮮品などのカタログ通販サービスに外付け読み取り装置を採用(写真2[拡大表示])。2002年11月から,大阪市の一部地域でサービスを提供している。

 顧客となる会員は,電話,ファクシミリ,パソコン,携帯を使い,カタログ掲載商品を発注する。携帯での発注はキー操作でも可能だが,月額200円の外付けのバーコード読み取り装置を装着すれば,操作が簡単になる。会員がカタログ誌面に印刷されているマイクロバーコードを読み取ると,読み取り装置が携帯のキー操作を代行。自動的にサイトに接続し,品番や個数を送信してくれる。

 現在は会員7000人に対して,携帯で発注するのは7%程度。そのうち300~400人が,バーコードを使って発注してくる。「発注作業が簡単なためか,バーコード利用者は顧客単価が1~2割は高い」(システム構築・運営を受託するエブリデイ・ドット・コム事業統括本部 ディレクターの柴田 巌氏)。バーコード利用者が徐々に増えており,無視できない数字といえる。