電話やメール,Webなど,さまざまな手段で顧客からの問い合わせを受け付ける「コンタクト・センター」。その次世代版ともいえるセンターの仕組みを比較的手軽に導入できるサービスが相次いで登場している。電話までIPネットワーク上に統合したサービスや,インスタント・メッセージやWeb画面共有といった多様な受け付け手段を提供するサービスがそれだ。

(山崎 洋一=yyamazak@nikkeibp.co.jp)

図1●パワードコムが2003年4月にも提供予定のIPコンタクト・センターのサービス
IPコンタクト・センターを構築し,IP-PBXやACD(自動呼分配),CTI(コンピュータ・テレフォニ統合)サーバーなどの機能を提供する。メールやWebサイトでの顧客対応も可能。地理的に離れたコンタクト・センターや在宅オペレータもIPネットワークで接続し,分散コンタクト・センターを実現できる。コンタクト・センターは1本のIPネットワークがあれば,電話もメールも受け付けられるため,コストを抑えられる。
 電話,FAX,Web,メール,インスタント・メッセージ(IM)――。さまざまな手段で顧客からの問い合わせを受け付けるコンタクト・センターが増えつつある。そんな中,さらに機能強化した次世代コンタクト・センター向けにシステムを貸し出すサービスが相次いで登場してきた。すべての機能をIPネットワーク上で提供するサービスや,多様な受け付け手段を提供するサービスである。

 パワードコムは,コール・センターの導入コンサルティングを手がけるテレフォニーの協力を得て,IPコンタクト・センターのASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)型サービスを開発。2003年4月にも提供を開始する。VoIP技術をベースに,コンタクト・センターに必要なすべての機能をIPネットワーク上で提供するサービスである(図1[拡大表示])。このほか,ベンチャ企業のコラボスも,「@nyplace」という同様のサービスを提供している。

 コンタクト・センターのアウトソーシング・サービスを提供するトランス・コスモスは,従来の電話やメールによる問い合わせ受け付けのほかに,新たな顧客サポート方法を加える。顧客とオペレータがWeb画面を共有できるサービスである。そのために,近く,米ヒップボーンの製品を導入する。

 このほか,デジタルフォレストが,2003年2月に「nowCall」というサービスを開始した。IMサーバーの機能を企業の顧客サポート用に提供するサービスで,テキスト・メッセージのほか,音声通信やビデオ会議での問い合わせ受け付けに対応できる。

 実際には,こうした仕組みは,製品にはすでに実装されていた。CTI(コンピュータ・テレフォニ統合)サーバー製品の中には,VoIPやIM,Web画面共有などに対応したものがある。ただ,これらの製品を導入して自前でコンタクト・センターを構築すると,膨大なコストがかかる。サービスを使えば,企業側に専用のシステムを導入することなく,次世代型のコンタクト・センターを構築できる。

IPベースでフル機能を提供

 パワードコムやコラボスのサービスでは,コンタクト・センターに必要なシステムをすべてIPネットワーク上で提供する。具体的には,顧客からの電話をIPデータに変換するVoIPゲートウエイ,IP-PBX(ソフト・スイッチ),複数のオペレータに電話を適切に割り振るACD(自動呼分配)システム,CTIサーバーである。パワードコムの場合は,コンタクト・センターの間を結ぶIPネットワークも併せて提供する。必要に応じて,Webサーバーやメール・サーバーも提供する。

 こうしたIPコンタクト・センターを自前で構築しようとすると,ソフト・スイッチやACDのために膨大な投資を余儀なくされる。テレフォニーの試算によると,オペレータの数にして100席の規模のシステムを構築するには,システム投資だけで3億円にも上る。

 ASPのサービスなら,ランニング・コストはかかるものの,初期投資はオペレータが利用するIP電話機やパソコンのコストだけで済む。システム運用の負担も軽減される。パワードコムは,1席当たり月額5万円程度の料金を目指しているという。

 電話回線を,IPネットワークに集約できるため,通信料金を安く抑えることもできる。また,IPネットワークに接続してさえいれば,物理的に離れた拠点や在宅オペレータを統合して1つのIPコンタクト・センターとして運用できる。