システム間を手軽につなげたい,取引先ごとにバラバラな接続インタフェースの管理コストを下げたい――。そんな理由から,XML(拡張可能マークアップ言語)をベースとするWebサービス技術を採用したシステム構築事例が増えている。接続までの技術的な手間が軽減され,コスト削減と開発期間の短縮を実現できたという。

(実森 仁志=hjitsumo@nikkeibp.co.jp)

表1●Webサービス技術を採用したサービスの例(地色が青のものはWebサービス提供側,黄のものはWebサービス利用側)
 Webシステム間の連携を容易にする「Webサービス技術」を利用したシステムの構築例が増えつつある。XML(拡張可能マークアップ言語)データの伝送プロトコルであるSOAPや,システム間接続のインタフェース仕様を記述するWSDL(Webサービス記述言語)などを使用したシステムである。

 現状では,サービス提供者が採用するケースが多い(表1[拡大表示])。具体的には,決済,物流,グループウエアなどのASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)が,「ユーザー企業の社内システムから接続しやすくするため」(ヤマトシステム開発 E-ビジネス統括部長の杵渕 良夫氏)に用いる。

 Webサービス技術は,国際標準技術としてほとんどのベンダーが支持しており,今後の普及が確実視されている。すでに外部システムとの接続インタフェースをXMLベースに統一する方針を固めたユーザー企業が「Webサービス技術による接続を“指名買い”してくるケースもある」(決済システム「PayCounter」をWebサービス化したKDDI IP事業統轄本部 eビジネスシステム部 アプリケーショングループリーダーで次長の阿部 正吉氏)。

技術的な手間は減る

図1●Webサービス技術を採用した目的と理由

 サービス内容やシステム形態によらず,ほとんどの企業が評価するのは,「接続作業の技術的な手間が減った」(ココロネットワークスのSIを手がける富士通 プロジェクトA-XML XML基盤技術部長の浦野 昇氏)こと(図1[拡大表示])。

 従来,企業をまたがるシステム間連携を実現するには,連携に利用するプロトコルの種類,認証や暗号化の方法,交換するデータの形式などを事前に話し合い,合意しておかなければならなかった。さらにその合意に基づいて相互にシステムを作り込む必要があった。企業間連携の敷居を高くしていたこれらの手間が,Webサービス技術の採用で格段に減るというのだ。

 具体的には,「OS,開発言語,使用するミドルウエアなど,相手側のシステム構成の詳細を知らなくても接続できる」(富士写真フイルム 宮台技術センター 主任研究員の原 誠氏),「既存システムのビジネス・ロジックを生かしながら最低限の作り込みで済む」(オブ・インターラクティブ 社長の田中 伸明氏)などの効果がある。

 しかも,Webサービス技術をシステムに組み込むためのツールがそろっている。2002年以降に登場した統合開発ソフトは,ほとんどがこうしたツールを含む。Webサービス技術を使って接続する場合の作業を,大幅に省力化できるようになっている。

 例えば,WSDLファイルから,クライアント側のプログラム(プロキシ・クラス)を自動生成してくれるツールがある。ほかにも,Webサービス・システムから受け取ったXMLデータをオブジェクト化し,プログラムから扱いやすくするようなツールも登場している。こうしたツールにより「WSDLファイルを受け取った数日後にはシステム間を連携できた」(ヤマトシステム開発のWebサービスと連携可能な企業間電子商取引ソフト「Commerce Brains」を開発するビジネス・インフィニティ COOの濱村 誠氏)。