Webブラウザの選択肢が増える。ノルウェーのオペラ・ソフトウエアの「Opera6.0 for Windows」(日本語版)や,オープン・ソースの「Mozilla」の正式リリースが間近である。事実上,「Internet Explorer」,または「Netscape」しかなかったブラウザに,新たな選択肢が加わる。一方で,業務向けのブラウザも登場している。アクシスソフトウェアの「Biz/Browser」である。キャッシュ機能を強化し,応答を高速化する。
ノルウェーのオペラ・ソフトウエアが,ようやくブラウザ「Opera」の日本語版を出荷する。1月下旬に「Opera6.0 for Windows」の日本語版をリリースする予定である。以前からOperaは,動きが軽く使い勝手がよいため,評価が高かった。しかし,英語をはじめ,いくつもの言語に対応するものの,日本語版は提供されなかった。
これまではWebブラウザといえば,実質的に,米マイクロソフトの「Internet Explorer(IE)」か,米ネットスケープ・コミュニケーションズの「Netscape6」しかなかった。もはや,ブラウザの選択に,時間を費やすユーザーはほとんどいないという状況になっていた。Operaがこの状況に一石を投じる。
また,米Mozilla Organizationが開発しているオープン・ソースのWebブラウザ「Mozilla」も正式リリースが間近である。
一方で,業務アプリケーション向けのブラウザも登場している。アクシスソフトウェアの「Biz/Browser Ver3.0」である。キャッシュ機能を強化し,応答を高速化する。
自由度が高いOpera
「Opera6.0 for Windows」は有料のソフトウエアである。価格は39ドル。無料でも使用できるが,そのときには右上に常時バナー広告が表示される。オペラ・ソフトウエアのWebサイトで39ドルを支払うと,レジスト・コードがもらえる。このコードをブラウザに入力するとバナーが消える仕組みである。日本語版のリリース予定は1月下旬であるが,すでに日本語化キットがフリーで公開されている。これを利用すれば,メニューなどが日本語になる。
Operaは自由度が高い。ユーザーの好みによって,さまざまなインタフェースでWebアクセスが可能である。
まず,Operaのウインドウ内で複数のWebページを表示するMDI(多重ドキュメント・インタフェース)か(写真1[拡大表示]),Webページを個別のウインドウで表示するSDI(単一ドキュメント・インタフェース)を選べる。起動時にMDIとSDIどちらでウインドウを表示するかを選択する。
Webページを拡大/縮小して表示する機能を備える。文字を拡大/縮小するだけではなく,画像やWebページ全体を拡大/縮小して表示する。Webページを表示するウインドウの右上にプルダウン・メニューがあり,表示倍率を変更できる(写真2[拡大表示])。マウスのホイールでも拡大/縮小が可能である。
マウスを使ってブラウザを操作する「マウスジェスチャー」と呼ばれる機能もある(表1[拡大表示])。たとえば,マウスを右クリックしながら左へ動かせば「戻る」,右に動かせば「進む」でページを移動できる。覚えれば,操作性が向上する機能である。
入力の手間を軽減する機能も備える。ECサイトやポータル・サイトなどでは,氏名や住所,電話番号などの個人情報を登録する場合が多い。Operaでは,あらかじめブラウザの設定に個人情報を登録しておけば,マウスの操作だけでフォームを埋められる。
Webページの表示に関しては,IEやNetscapeとそん色ない。W3C(World Wide Webコンソーシアム)が規定している標準技術に対応している。HTML4.0はもちろん,XHTML(拡張可能HTML)やCSS(カスケーディング・スタイルシート)などを表示できる。通信ではSSL (セキュア・ソケット・レイヤー)も使える。メーラーやニュース・クライアントも備えている。
Javaベースのアプリケーションであるため,サポートするOSも多い。Windows以外に,MacOS,Linux,Solaris,OS/2,BeOS,QNX,Symbian OSで動作する。
ただし,特殊なコンテンツを再生するためのプラグインは,IEより少ない。Operaのプラグインは,NetscapeのプラグインAPIを使用しており,基本的にNetscape対応のプラグインしか使えない。ActiveXなどを使うIE向けプラグインは利用できない。それでもマクロメディアのFlashやアップルコンピュータのQuickTimeなどのコンテンツはOperaで再生可能である。
ネットスケープ・コミュニケーションズが中心になって開発している「Mozilla」も正式版が間近である(写真3[拡大表示])。2001年10月に,Mozilla Organizationが運営する「Mozilla.org」で,6カ月以内に正式版1.0をリリースする予定であることを明らかにしている。W3Cの標準技術技術を積極的に取り入れているオープン・ソースのソフトウエアである。ソース・コードも配布されており,「Netscape6」のようにMozillaをベースにしたWebブラウザも増えてきている。
業務システム向けWebブラウザも
アクシスソフトウェアのBiz/Browser Ver3.0は,企業が業務でWebアプリケーションを利用することを想定したブラウザである。クライアント・マシン上のキャッシュを活用して,応答を高速化する仕組みを備えている。「業務系のWebアプリケーションでは,Webページのフォームはほぼ固定されている。アクセスのたびに変わる動的な部分は一部分である場合が多い」(アクシスソフトウェア マーケティング企画室長の山形 浩一氏)のである。つまり,Webページの大部分をキャッシュに保存し,動的な部分のみをやりとりするようにすれば,高速処理が可能になる。
HTMLのMETAタグを使えば,キャッシュの可否やキャッシュする期間を指定できる。しかし,それは,あくまでもファイル単位である。Biz/Browserならば,表の項目名はキャッシュし,データ部分のみダウンロードするということが可能である。
Biz/Designerと呼ばれるツールでWebページを作成する。それをCRS(Chain Reflection Script)と呼ばれるJavaScriptベースのスクリプト言語のファイルに変換し,Webサーバー上に配置する。
エンドユーザーはBiz/Browserを使って,一般のブラウザと同じように,Webサーバーにアクセスできる(図1[拡大表示])。最初のアクセス時は,CRSファイルをダウンロードしてコンパイルする。さらに動的部分もサーバーからダウンロードする。2回目以降は動的部分だけをダウンロードするので,高速に表示できる。