Webサーバー側はツールを使って簡単にP3P準拠に変更可能

写真2●日本ニューメディア協会が提供するP3P作成ウィザード
取得した個人情報をどういう目的で利用するかを選択する
写真3●ユーザーから取得する個人情報の種類をXMLで記述
画面上の「基本データの作り方」,「拡張データの作り方」をクリックすれば,XMLでの表記方法とデータ型が一覧表示されるので,これをコピーして使う
写真4●自動生成されたP3Pポリシー・ファイル
図3●P3Pに対応したWebサイトにアクセスした場合のデータの流れ
Webサイトにアクセスすると,P3Pポリシー・ファイルがクライアントに送信される。クライアントのブラウザは受け取ったポリシー・ファイルと自身が持つ個人情報ファイル(ユーザー・プリファレンス)を照合し,ポリシーに問題がなければ,要求された個人情報をWebサイトに送信してWebページを閲覧できる。ただし,現状のP3P対応ブラウザ(IE6)では,ポリシーとユーザー・プリファレンスとの照合はせず,クッキーを制御するだけである
 WebサイトをP3Pに対応させるには,サーバー側のプライバシ・ポリシーをXML(拡張可能マークアップ言語)で記述し直さなければならない。P3P対応のプライバシ・ポリシー・ファイルを作成するツールは,海外ではいくつか提供され始めている。国内では,ニューメディア開発協会がポリシー作成ウイザードを無償提供している。

 ニューメディア開発協会のWebページ(http://www.nmda.or.jp/enc/privacy/index.html)の中央にある「P3Pポリシーウィザード(P3P 2000年12月勧告候補版対応)」をクリックすると,ポリシー入力ウインドウが開く。「団体情報」や「ポリシー」,「係争情報」など,7つのタブのそれぞれに必要な情報を記入していけば,ポリシー・ファイルが作成できる。

 最初の「団体情報」タブでは,自サイトの情報を記入する。どのような目的で個人情報を収集するかは「目的情報」タブで指定し(写真2),収集する個人情報は「収集データ」タブにXML形式で記述する(写真3)。「基本データ作成」をクリックすると,収集するデータのXML表記とデータ型が一覧表示されるので,この中から収集したい個人データに関する項目のXML表記をコピーして「収集データ」のテキスト・ボックスに張り付ければよい。

 すべての項目を入力して[P3Pポリシー作成]ボタンを押せば,XML形式で記述されたP3Pポリシーが表示される(写真4)。これを画面の項目ごとにメモ帳などにコピーして保存する。ただし,P3PポリシーとPRFは拡張子を「.xml」にして,文字形式は「UTF-8」形式で保存しなければならない。作成したファイルをサイト内に配置し,トップ・ページにP3Pポリシー・ファイルへのURLを追加すれば完了である。

 W3Cでは,P3Pに対応したサイトを認定する仕組みを用意している。W3Cの認定リストに加わるには,「http://www.w3.org/P3P/validator/20001215/」にアクセスして動作検証を行うと同時に,管理者にその旨のメールを送信すればよい。現在,167社(サイト)が認定されている。

最終勧告は機能が縮小される?

 W3Cの認定ベースとなっているのがP3P1.0CR(2000年12月15日版勧告候補)である。このP3P1.0CR版の評価は9月24日で終了し,現在は最終ドラフト案(2001年9月28日版)を作成している。しかし,「この最終案は,当初の計画よりも機能が縮小される可能性がある」(インターネット協会 副理事長の国分 明男氏)という。

 本来,P3Pが目指しているのは,クッキーの制御がメインではない。P3Pでは,Webサービス側がプライバシ・ポリシーを正確に開示し,ユーザーがそれを見て個人情報を送信するかどうかを決定する「インフォームド・コンセント」の仕組みを作成するのが目的だ。

 P3Pの動作モデルは図3[拡大表示]のようになる。まず,ユーザーがP3P対応Webサイトにアクセスすると,P3Pポリシー・ファイル(またはそのURL)が送信される。P3P対応ブラウザは受け取ったポリシー・ファイルと自身が持つ個人情報(ユーザー・プリファレンス)を照合し,ポリシーに問題がなければ要求された情報をWebサイトに送信してWebページを閲覧する。

 最初の勧告では,インフォームド・コンセント機能は組み込まれない見込みだ。ただし,ブラウザ側で機能を追加するのは自由だ。しかし,P3Pのクライアント機能を備える唯一のブラウザであるIE6は,インフォームド・コンセント機能を備えていない。

P3Pが普及するのは当分先

 個人情報を最も必要とするECサイトの場合,P3Pへの対応は必要だろうか。現状は,各ECサイトともインターネット協会が作成したガイドラインなどを基に,プライベート・ポリシーを策定している。

 MSNはPassportシステムという独自のユーザー認証および個人情報管理システムを構築している。「P3PとPassportは同じ個人情報を扱うものではあるが,目的が異なる。現段階では両者を連携させることは考えていない」(マイクロソフト MSN事業部パブリッシンググループ・プログラムマネージャの宮坂 雅輝氏)という。

 MSNのページ自体は,すでにP3Pに対応している。しかし,バナー広告などを提供する第三者のサイトから送られてくるサード・パーティ・クッキーに関しては未対応なのが現状だ。MSNでは「1カ月くらいあれば,すべてのサード・パーティにP3P対応してもらうことができる」としている。

 BIGLOBEは,同サイトの広告総代理店であるサイバーウイングの広告配信サーバーもP3Pに対応し,バナー広告も安全であることを強調している。「現在はまだP3Pの重要性を啓もうしている状態。今後半年くらいでP3Pに対応するサイトが増えてくるだろう。P3Pが普及すれば,信頼性という観点から,いちばん最初に影響を受けるのは広告配信会社」(NEC BIGLOBEサービス事業部パーソナルサービス事業部ポータルサービス部長の下島 健彦氏)と考えるからだ。

 NECは,すでにプライバシ・ポリシーを作成している広告配信企業などに対して,P3Pに対応するためのコンサルティング・サービスの提供を計画している。P3P対応のポリシー・ファイル(XML)の作成よりも,すでに作成してあるプライバシ・ポリシーをカスタマイズするのが難しい。そのため,NECでは,(1)既存のプライバシ・ポリシーをP3P用のXMLファイルに変換するためのチェック・シートの作成,(2)P3Pに対応させるページの選定,(3)各ページで取得する情報の選択,などの方向性を示していく。