スタイルシートが使える

 XHTML Basicでは,文字のサイズや書体などを直接指定するスタイル属性が使えない。<h1>~<h6>などのヘッダーや,<blockquote>などは使えるが,<blink>(点滅文字)や,<hr>(直線)などは使えない。その代わりに,スタイルシートが利用できる。スタイルシートを使えば,コンテンツ本体は変更しないで,スタイルシートを切り替えるだけで見栄えを変えられる。

 XHTML Basicでは,外部スタイルシートに限定している。スタイルシートをコンテンツ本文に書き込む形は認められていない。外部スタイルシートを使うには,linkタグを使って指定する。スタイルシートの記述方法はHTML4.0とほぼ同じだという。

 携帯電話やPDAでも,機種によって表示能力などが異なっている。機種に合わせたスタイルシートを用意すれば,同じコンテンツを使ってスタイルシートの切り替えだけでそれぞれの機種に合わせた画面を提供できる。

 「media属性」を使えば,端末がそれぞれ自分の表示能力に合わせたスタイルシートを使うように設定できる。いまのところmedia属性の値として「handheld」,「screen」,印刷用は「print」などが用意されている。

 さらに現在,W3Cが標準化中の携帯向けスタイルシート「CSS Mobile Profile」(CSSモバイル・プロファイル)仕様では,機種ごとの違いも取り込んでいる。具体的にはmedia属性のほかに,画面サイズ,画面解像度,表示可能な色数といったパラメータも設定できる。

図2●XHTML Basicではスタイルシートを使ってスタイルを指定する
標準化中のCSS3を使えば将来は機種ごとの違いに,今より簡単に対応できる可能性もある
 例えば,「スクリーンの幅と高さが160ピクセル以下の携帯機器」と「解像度が144dpi以上の携帯機器」のスタイルシートを別々に使うように設定できる(図2[拡大表示])。自分の動作環境からどのスタイルシートを使うかを決めて,適切なスタイルでコンテンツを表示する。携帯電話の機種ごとの画面表示の違いに,より簡単に対応できるようになる可能性がある。

 スタイルシートは,これまでコンパクトHTMLやHDMLだけを使ってきた人にとっては少しなじみにくい概念かもしれない。しかし,端末に合わせて見やすい画面を提供しようとするならば,使ってみる価値はある。

機能拡張を容易に

 XHTMLやXHTML Basicは,タグを容易に追加できるように考えられている。それが,2001年4月6日に勧告された,XHTMLのタグを拡張するための仕様「Modularization of XHTML」(XHTMLMOD)である。

 WAPフォーラムでは,このXHTMLMODを使い,現行のWMLをXHTML Basicの拡張版で置き換えてしまう予定である。つまり,「デッキ」や「カード」といったWML独自の機能などを,「WML Extension Module」として追加する予定である。ノキアをはじめ複数の関係者は,「次世代規格WAP2.0の記述言語WML2はXHTML Basic1.1のスーパーセットにする」と明言している。

移行は徐々に進む

 XHTML Basicが標準になったからといって,一気に全面移行するわけではない。各メーカーはXHTML Basicだけでなく従来の記述言語で書いたコンテンツも見られるようにするマルチモード・ブラウザを搭載した端末を提供する。

 海外では,米オープンウェーブ・システムズが,XHTML,HDML,コンパクトHTMLなどに対応するブラウザ・ソフトを発表,KDDIが採用を決定している。国内でも,ACCESSが2001年6月からマルチモード・ブラウザ「NetFront v3.0」を提供し始める。ドコモも,コンパクトHTMLとXHTML Basicのデュアル・モード・ブラウザを搭載した端末を提供する予定である。

W3Cがテスト用ブラウザ提供

 国内ではXHTML Basic対応の携帯端末はまだ世に出ていないため,実際にXHTML Basicの効果を調べてみることはできない。しかし,パソコン用のWebブラウザでXHTML 1.1とXHTML Basicに対応したソフトはいくつかある。

 なかでもW3Cが支援しているオープン・ソースのWebエディタ兼ブラウザ・ソフト「Amaya」(http://www.w3.org/Amaya/)が最近リファレンスとしてよく使われているようだ。このソフトは,W3Cの新しい勧告について実証するために,そのメンバーの一部がボランティアで作っているもの。現在のバージョン(4.3.2)ではHTML 4.01のほか,XHTML 1.0,XHTML Basicに対応している。ブラウズするときに,受け付けるバージョンを指定して,コンテンツが読めるかどうかをテストできる。XHTML Basicのタグだけを受け付けるように設定すれば,ページに問題があるかどうかがすぐに分かる。Netscape 6やInternet ExplorerがまだXHTMLに対応していない今,試してみる価値はあるだろう。