FTTH(ファイバ・ツー・ザ・ホーム)サービスが本格化する。低料金で,エリアの拡大も早まりそうだ。2001年3月には有線ブロードネットワークスが最高100Mビット/秒のサービスを月額5800円で開始。NTT東日本/西日本も,7月に開始する本サービスの料金を最高10Mビット/秒で5900円程度などと,試験サービス時の半額以下にする。光ファイバだけでは導入などが難しい場合もあることを考え,有線や無線を組み合わせたサービスも登場する。

実森 仁志=hjitsumo@nikkeibp.co.jp)

 一般家庭に光ファイバを直接引き込むFTTH(ファイバ・ツー・ザ・ホーム)サービスの提供が,低料金で本格化する。すでに2000年後半から提供していた試験サービスが,本サービスとしてスタートした。2001年3月に有線ブロードネットワークス(usen)が最高100Mビット/秒の本サービスを月額5800円で開始。NTT東日本/西日本(NTT地域会社)も7月,最高10Mビット/秒を5900円程度,最高100Mビット/秒を9900円程度で本サービスを始める。

 提供エリアの拡大も進む。NTT地域会社は,2004年の3月までに,県庁所在地級の都市でサービスを展開する。光ファイバを直接引き込むことが難しい住宅などでも,高速伝送を実現できるよう,FTTH技術にメタル線や無線技術を組み合わせる動きもある。

ブロードバンドの本命は“光”

 2001年4月時点で,日本のDSL(ディジタル加入者線)利用者は10万人を超えた。急速に普及するなか,伝送速度に不満の声もある。最高1.5Mビット/秒をうたうサービスの場合,実質的なスループットは1Mビット/秒を下回ることがほとんど。200kビット/秒程度のケースもある。ユーザー宅から収容局までのアナログ電話回線上で信号が減退したり,周辺のノイズの影響を受けたりするからだ。

 その点,伝送路に光ファイバを使用するFTTHサービスならば信号減退などはない。その分,サービス・レベルは高くなる。ビジネス・ユースやヘビー・ユースに向く。「ブロードバンドの本命は“光”。最終的に光以外の通信事業は淘汰される」(usen 事業インフラ開発室担当の藤本 篤志氏)。

低料金で普及に弾みを

図1 NTTが「Bフレッツ」(仮称)で採用するネットワーク構成の特徴
7月に本サービスを開始する予定のBフレッツでは,試験サービス時よりも料金を引き下げている。料金引き下げのポイントになったのは,(1)ダーク・ファイバの料金引き下げ,(2)終端装置のコスト削減,(3)光ファイバを共用するメニューの用意―の3点である。

 本格化するFTTHサービスの普及に弾みをつけるため,事業各社は料金設定を格安にした(表1)。

 先陣を切ったのはusen。2001年3月に最高100Mビット/秒の「FTTHブロードバンドインターネットサービス」を月額5800円で開始した。NTT地域会社も,7月に開始する「Bフレッツ」(仮称)の料金を,最高10Mビット/秒で月額5900円程度,最高100Mビット/秒で月額9900円程度にする。別途インターネット接続事業者に接続料を支払う必要はあるが,それでも試験サービス時の月額1万3000円などと比べると半額以下になった。

 低料金のカギになったのは,LAN技術の活用などコスト削減の取り組みである。usenは,既存のLAN技術を使いスター型のネットワーク網を構築。レイヤー3スイッチや100BASE-SXスイッチング・ハブなど市販の汎用製品を採用し,低コスト化を図った。

 NTT地域会社は,独自仕様の機器を多く採用する分だけ,ネットワークの構築コストは割高。しかし,NTT地域会社はダーク・ファイバ利用料の引き下げや宅内終端装置のコスト削減などで料金を安く設定する(図1[拡大表示])。

有線/無線も活用し普及目指す

 コストを削減しつつ,提供エリアを拡大しようとする動きもある。FTTH技術にメタル回線や無線技術を組み合わせる動きである。光ファイバを敷設するのが難しい各住宅への引き込み部分を,メタル線や無線で置き換える。既設の集合住宅などで設備の設置スペースを確保できない場合や,管理組合の賛同を得られない場合にも,対応しやすい利点がある。

 スピードネットは2001年夏に,東京電力の光ファイバとメタル線を組み合わせた有線サービスを開始する。ユーザー宅と中継局とをメタル線で結び,中継局で集線して光ファイバと接続する。伝送速度は最高10Mビット/秒で,料金と提供地域は未定。

 NTT地域会社は,加入者系無線アクセス(FWA)システムとの併用を検討中。5月8日に総務省が公表したFWA向けの26GHz帯の無線を使う予定。中継ポイントまでは光ファイバを利用し,そこから半径1km程度の範囲内のユーザーを無線でカバーする。光ファイバを直接引き込めない地区や家屋に無線を用いる。免許が交付されれば,「1年後をめどにBフレッツで利用する」(NTT東日本 IPネットワーク推進室 担当部長の本橋 豊氏)。

事業者名 サービス名 最高伝送速度 実質月額料金* サービス提供地域
NTT 東日本/西日本 ファミリータイプ 10Mビット/秒 7100円程度 2001年7月に東京都内と大阪市内の一部地域で本サービスを開始。2002年3月までに東京23区と大阪市内に,2003年3月までに首都圏と政令指定都市に,2004年3月までに県庁所在地級都市にサービスを拡大
マンションタイプ 100Mビット/秒 6200円程度
ベーシックタイプ 100Mビット/秒 1万4900円程度
有線ブロードネットワークス Home100 100Mビット/秒 6100円 東京都内の一部地域で本サービスを提供中。2001年10月までに東京23区と政令指定都市に,2002年4月までに県庁所在地級の都市に,それぞれサービスを拡大
Office100 100Mビット/秒 1万1000円
アイ・ピー・レボルーション 集合住宅向け10メガサービス 10Mビット/秒 6100円 東京都内の一部地域で本サービスを提供中
スピードネット 有線サービス 10Mビット/秒 未定 2001年夏に,東京都内や埼玉県内の一部地域で本サービスを提供する予定
表1 FTTH技術を基盤とする通信サービスを提供する主な事業者とサービス内容
*:宅内終端装置の利用料(900~1200円)やインターネット接続料などを含んだ実質的な料金。利用環境などに応じて変化する場合がある。NTT東日本/西日本で必要となるインターネット接続料は,契約事業者ごとに異なるうえ,各事業者とも未発表。表中では,ファミリータイプとマンションタイプを1200円,ベーシックタイプを5000円と仮定して試算した。有線ブロードネットワークスの料金は,コンテンツ・サービスの基本料,月額300円を含む