Javaのソフト部品であるEJB(Enterprise JavaBeans)の流通ビジネスがいよいよ始まる。ソフト会社やインテグレータが協力して設立した「コンポーネントスクエア」が,EJBコンポーネントを売買するためのマーケットプレイスを立ち上げた。ソフト部品の再利用には難しさがあるが,移植性を高めようとする動きもある。「EJBコンポーネントに関するコンソーシアム」は移植性の高いコンポーネントの実装や設計,品質表示などについての規約を作成している。

(福田 崇男=tafukuda@nikkeibp.co.jp)

 EJB(Enterprise JavaBeans)コンポーネントのマーケットプレイスを運営する新会社が誕生した。住商エレクトロニクス,日立ソフトウェアエンジニアリング,日本総合研究所が中心となり,2001年1月12日に設立した「コンポーネントスクエア」である。

 Javaでは,サーバー上で動作するアプリケーションをソフト部品(EJBコンポーネント)の集まりとして記述できるようになっている。アプリケーションを機能ごとに分割し部品化することで,そのまま,あるいは一部改良して他のアプリケーションに組み込めるようにするためである。

 ところが,こうしたソフト部品の再利用は仕組みのうえでは可能でも,実際にはまだそれほど広まっていない。再利用したいEJBコンポーネントが少ない,コンポーネントを手直ししなければ再利用できない,といった問題があったからである。

図1●会員になった企業はマーケットプレイス上でEJBコンポーネントを売買する
システム開発案件で作ったEJBコンポーネントは,商品化してマーケットプレイス上で販売することができる。コンポーネントスクエアは,商品化のためのサポート,マーケティングをする
 コンポーネントスクエアは,出来上がったEJBコンポーネントを商品として流通させるための場(マーケットプレイス)を提供する。このマーケットプレイス上で,EJBコンポーネントを開発したソフトウエア・ベンダーや,それを利用するインテグレータが,ソフト部品を売買する(図1[拡大表示])。

 EJBコンポーネントを商品化するためのコンサルティングやマーケティングもサービスとして提供する。「開発したEJBコンポーネントが,再利用されずに埋もれていることが多い」(コンポーネントスクエア代表取締役社長の田村 俊明氏)という。そのようなコンポーネントの商品化を働きかけ,マーケットプレイスを活発なものにしていく。

フレームワークでシステム構築

 流通させるEJBコンポーネントは,「フレームワーク」と「汎用コンポーネント」の2種類に分かれる。

 フレームワークとは,開発するアプリケーションのベースとなる機能を提供するコンポーネント群である。ECサイト向けのフレームワークならば,商品管理や顧客管理,ショッピング・カートといった基本的な機能を備える。ユーザーは,このフレームワークの上に新たにEJBコンポーネントを追加してシステムを構築する。

 汎用コンポーネントとは,フレームワークに追加するEJBコンポーネントである。例えば,オークションの機能を備えた汎用コンポーネントをECサイト用のフレームワークと組み合わせる。汎用コンポーネントとしてオークション機能を部品化しておけば,いろいろなECアプリケーションに追加できるようになる。ECサイト構築などを請け負ったインテグレータは,こうしたコンポーネント商品の中から必要なものを購入する。

 コンポーネントスクエアでは現在,フレームワークを中心に十数種類のEJBコンポーネントを商品化している。ただし,コンポーネントが本格的に流通し,利用されるようになるには,組み合わせやすいコンポーネントが豊富に出揃う必要がある。それにはもう少し時間がかかりそうだ。

移植性にはまだ問題が

 しかし,EJBコンポーネントの流通にはまだ障害がある。ソフト部品として作ったコンポーネントの移植性を確保することが難しいのである。例えば,Javaアプリケーション・サーバーを利用してシステムを構築する場合,問題が起こる可能性がある。

 EJBコンポーネントを稼働させるためのソフトウエアであるアプリケーション・サーバーは,多くの製品がJ2EE(Java2 Platform Enterprise Edition)という標準仕様に準拠している。ところが製品ごとに実装が異なったり,仕様にない機能が追加されたりしている場合がある。1つの製品に特化した機能を使うと,他の製品では動かないことがある。「EJBコンポーネントの中には,実はたまたまそのアプリケーション・サーバーで動作しているというだけのものもある」(富士通ソフトウエア事業本部の吉田 裕之氏)という。

 こうした問題を解決しようとする動きも出てきた。EJBコンポーネントを流通しやすくするための規約を作成することを目的に設立された「EJBコンポーネントに関するコンソーシアム」が,「ポータブルコンポーネント規約第1版」を2001年2月1日に発表した。複数ベンダーのアプリケーション・サーバー製品上で動作するようなEJBコンポーネントを開発するための規約である。EJBコンポーネントを作るうえで当然考慮すべきプログラム上の禁止事項などを規約として定めている。

表1●「EJBコンポーネントに関するコンソーシアム」の各部会
 EJBコンポーネントに関するコンソーシアムには,富士通,日本アイ・ビー・エムなどのアプリケーション・サーバー・ベンダーや,イーシーワン,日立ソフトウェアエンジニアリングをはじめとするインテグレータなど合計59社が参加している。ポータブルコンポーネント規約は,これらの企業が持つノウハウを集約したものだ。ただし,この規約に準じたコンポーネントが,どのアプリケーション・サーバーでも動作することは保証していない。EJBコンポーネントの移植性を確保するための,必要条件にすぎない。

 コンソーシアムでは,その他の規約についても検討している(表1[拡大表示])。4月には,各部会がこれまでの検討結果を公開する予定である。