ユーザビリティの高いWebサイトを構築するための支援サービスが相次いで登場。ユーザーの使い勝手をよくすることで,Webサイト開設の効果を高めることが目的である。アイエックスエルジャパン(iXL)やサイエントは,ユーザビリティ向上を専門とするグループを用意してサイト構築のサービスに臨む。リンコムは米ギガ・インフォメーション・グループの評価手法を用いてWebサイトの点数を付け,その結果を基にユーザビリティ向上のための改善点を提案する。

(中島 募=nakashim@nikkeibp.co.jp)

 ユーザーがWebサイトにアクセスしたとき「使いづらい」,「目的のコンテンツが探しにくい」といった不満を感じるとアクセスを中断してしまうことがある。ユーザーにストレスを感じさせるWebサイトは,新規ユーザーの獲得や商品売買などのチャンスを逃している可能性が高い。

 このような事態を解決するためのサービスが相次いで登場している。既存のWebサイトをよりユーザビリティの高いものに作り変える,または新規にユーザビリティの高いサイトを構築するための支援サービスである。とくに日本ではこれまで,より多くのユーザーのアクセスがあれば,より多くの機能があれば,ということに注目したWebサイトが構築されてきた。しかし今後は,「競合サイトとの差別化をはかるうえでもユーザビリティの向上が非常に重要になる」(サイエント マーケティング・ディレクターの牧田 幸裕氏)という。

専門グループがコンサルティング

 2000年1月からサービスを提供しているアイエックスエルジャパン(iXL)と,同年11月からサービスを開始したサイエントは,Webサイト利用のビジネスに特化したコンサルティング会社である。いずれも米国で実績がある企業の日本法人である。マーケティング調査やWebサイトのビジネス戦略から,デザインやバックエンドのシステム構築まで, Webサイトの構築を一貫して請け負う。

 両社はサイト・リニューアルなどの短期的なコンサルティングだけでなく,中長期にわたるWebビジネスの計画も手がける。たとえばiXLは現在,ジェイ・スカイ・スポーツのWebサイト(http://www.jskysports.co.jp)について,次期CS放送のコンテンツ配信を視野にいれた長期的な機能拡張のプロジェクトを手がけている。

 iXLとサイエントの特徴は,両社ともユーザビリティの向上のため,インフォメーション・アーキテクチャとユーザー・インタフェース・デザインという2つの専門グループで作業を進めることである。これらグループは,Webページの見栄えをおもに担当するグラフィック・デザインのグループなどと協調して作業を進め,Webサイトをより使いやすく,アクセスしやすいものにすることを目指す。

 インフォメーション・アーキテクチャのグループは,ユーザーが目的のコンテンツにたどりつけるようにナビゲーションに配慮してサイトの構造を設計する。iXLでは,「Webサイトのコンセプトを具体的なサービスにまで落とし込む作業もインフォメーション・アーキテクチャ・グループが担当する」(荒木 久義代表取締役)。

 ユーザー・インタフェース・デザインは,おもにページの操作性を担当するグループである。心理学や人間工学,認知工学などに基づいて,「こういったデザインのリンク・ボタンをこの場所に配置すれば,サイトのナビゲーションが向上する」というようにユーザーが操作しやすいページのレイアウトを設計する。

 両社はサイト構築の過程で定期的にWebサイトのターゲットとするユーザー層のモニターを集め,ユーザビリティをチェックする。

点数付けでWebを改善

 リンコムは既存のWebサイトに点数付けをして問題点を洗い出し,Webサイトの改善策を示すサービス「ウェブサイト・スコアカード」を2000年11月に開始した。米ギガ・インフォメーション・グループが開発した評価サービスを日本向けに提供する。

 専門のアナリストが顧客企業のWebサイトの使いやすさを評価して改良点などを提案する。また,競合他社のWebサイトを評価して,自社のサイトの評価結果と比較,改善に利用する。

 Webサイトの評価に当たり,企業の業務内容やWebサイトの目的,事業戦略などをミーティングで確認する。Webサイトの評価は,ユーザーの視点で「どんな構造のWebサイトが使いやすいか,サイトにどんな機能があれば便利か」といったような判断基準で進める。

図1●Gigaウェブサイト・スコアカードによるサイト評価方法
5人のアナリストが評価対象のWebサイトにアクセスし,測定項目をチェックして採点する。コンポーネントを採点し,それをもとに,エレメント,フィーチャ,カテゴリの順で点数を計算する。

 評価は「トップ・ページの使いやすさ」,「サイト全体の使いやすさ」,「掲載情報の充実度」,「購入手続き機能の提供」,「カスタマ・サポートの提供」など大きく8つのカテゴリ(分野)に分けて実施する(図1[拡大表示])。それぞれのカテゴリは5項目前後のフィーチャ(機能)で構成する。さらにそのフィーチャはエレメント(要素)に分けられ,エレメントはコンポーネント(部品)で構成する。実際の評価は,5人のアナリストがコンポーネントに点数を付け,それを基にフィーチャやカテゴリの点数を算出する。これらの項目は公的機関や調査会社の研究報告や統計情報をもとに,必要に応じて改定,または追加する。

 SIベンダーでもあるリンコムは,スコアカードによる評価の客観性を維持するために「診断後のサイト再構築などの依頼は請け負わない」(藤原 信二代表取締役)という。ビジネスを得たいがために,評価に影響が出ることを避けるためである。ユーザーの依頼があれば,ほかのシステム・インテグレータなどは紹介する。