企業内の業務プロセスや意思決定の方法などにおける「最も優れたやり方」という意味。自社内ばかりでなく競合他社のベストプラクティスを分析して、自社の業務や経営システムの改革に生かす手法は、「ベンチマーキング」と呼ばれている。こうした考えを取り入れれば、素早く業務改革や組織の見直しを図れる。

 生産性を高めたり、競争力を強化するために、業務のやり方や意思決定の仕組みを変えたいと考えている企業は多いでしょう。その一方で、どのような仕組みにすれば本当に効果を発揮できるのか見当がつかないと、頭を悩ませている人が多いはずです。

 そこで、すでに成功を納めている自社の他部門や他社における優れたやり方に学ぼうという考えが生まれました。こうしたお手本になるようなビジネスの仕組みや業務プロセスを、ベストプラクティスと呼びます。

 そしてこのベストプラクティスを分析して、自社に適用していく手法がベンチマーキングです。

◆効果
素早く業務改革できる

 ベストプラクティスに学ぶことのメリットの1つは、素早く業務を見直せる点です。もちろん他社のビジネスや業務を分析するには、時間や手間がかかりますが、ゼロから新たな方法を模索するのに比べれば、大幅に時間を短縮できます。加えて、お手本にするのが実際に成功している企業ですから、業務改革に際して社内の合意を得やすくなるでしょう。

 もう1つのメリットとしては、自社だけではなかなか生まれない独創的な発想やアイデアを取り入れられることが挙げられます。

 例えば、企業の社内組織は通常、過去の様々な経緯によって現在の形になっています。それを変革するには、社内のしがらみなどが壁になり、結局は既存の組織の考え方を踏襲した無難なものになりがちです。

 こうした際にベストプラクティスから学べば、今までにはない斬新な組織形態を考えることもできるでしょう。

 ただし、ベストプラクティスをそのまままねても、大きな成果は期待できません。

 最近はビジネスモデル特許が話題になっているように、他社のビジネス手法を丸ごとコピーしては、新たな問題を引き起こしかねません。

 そこで、自社の置かれた環境をある程度考慮して、自社にマッチしたより良いものにしていく努力が不可欠です。

◆事例
熱心に推進したウェルチGE会長

 米GE(ゼネラル・エレクトリック)のジャック・ウェルチ会長は、ベストプラクティスという考え方を積極的に推進した経営者の1人です。

 ヒューレット・パッカードやアメリカン・エキスプレス、本田技研工業といった好業績を維持していた企業を徹底的に分析。品質管理や顧客サービスにおいて、GEに比べて進んでいるベストプラクティスをどん欲に学び、自社に取り入れていきました。

 GEが「世界で最も優れた経営システムを持つ企業」と言われるようになったのも、こうした革新的な取り組みのたまものでしょう。

神保 重紀 sjin@nikkeibp.co.jp