複数の情報システムから社員が業務に必要だと考える情報を引き出して、まとめて閲覧できるようにする仕組みのこと。複数のシステムを立ち上げたり、いちいち情報を検索しなくても、常に最新の情報を入手できる。専用ソフトが登場しており、あらかじめ設定したキーワードに合致する情報を自動的に引き出すことも可能。

 営業や製造などの部門システム、そして電子メールやイントラネットなどの全社共通システム。今や企業内には数多くの情報システムがあります。こうしたシステムが蓄える膨大な情報の中から、自分の仕事に必要な情報を見つけだすのは、意外にやっかいな仕事です。

 「販売管理システムの月初からの実績データ」と「製造管理システムの在庫状況データ」といったように、何が見たいかがわかっている場合でも、現状ではいちいち複数のシステムを立ち上げなければなりません。しかもシステムが違えば操作方法も異なるため、忙しい時など、つい重要な情報を見逃してしまうこともあるでしょう。これではせっかくのシステムを十分に活用しているとは言えません。

 そこで注目を集めているのが「EIP(エンタープライズ・インフォメーション・ポータル)」という仕組みです。先ほどの例では、販売実績や在庫状況など社員が必要とする情報を、専用ソフトやウェブ・ブラウザから、まとめて一覧できるようになります。

◆効果
常に最新情報を1カ所で閲覧

 マイクロソフトの「デジタルダッシュボード」、日本アイ・ビー・エムの「Enteriprise Information Portal」といったEIP構築用のシステムが、すでに登場しています。これらを活用すれば、1つの画面を分割して、「販売実績グラフ」、「在庫実数の表」、「未読メール一覧」や「今日のスケジュール」といった情報を、常に最新の状態で一覧できます。

 自分が興味を持っているキーワード、例えば「EC(電子商取引)」や「連結経営」などをあらかじめ登録しておき、電子掲示板や電子会議室などのシステムから、キーワードに合致する情報だけを自動的に引き出せます。

 この機能を活用すれば、ほとんどの人はEIPにアクセスすれば、仕事に必要な情報の大半を入手できるようになります。いちいち複数のシステムを立ち上げる手間が省けるうえ、大切な情報を見逃すこともなくなるでしょう。

◆事例
職位ごとに専用画面

 カゴメは3月にデジタルダッシュボードを使って、「カゴメディア2000」という名称のEIPを立ち上げました。役員、一般社員、営業担当者向けという3通りの画面を用意しています。約70のシステムから職位ごとに必要になる情報を、確実に閲覧させることが目的です。来春には、社員1人ひとりが自分の関心や業務内容に合わせて、EIPをカスタマイズできる機能を付加する計画です。

 三菱化学も、横浜総合研究所と水島事業所をテストケースとしてEIPの整備を進めています。主に研究者を対象に、事前に登録したキーワードに合致する情報をウェブ・ブラウザに配信する計画です。社内に存在する情報や知識を十分に活用することで、ナレッジ・マネジメントに発展させることが狙いです。

安倍俊廣toshiabe@nikkeibp.co.jp