情報システムで実現したビジネス手法を対象にした特許。米国では通信料金の課金の仕組みからインターネットを利用した仲介ビジネスまで、幅広くビジネスモデル特許が認められている。これまで広く利用されてきたビジネスモデルが突然、特定企業の特許になるために企業間で係争が起きている。ビジネスメソッド特許とも言う。

 米国のプライスライン・ドット・コムという企業をご存知でしょうか。インターネットを利用し、主に航空券の売買を仲介するEC(電子商取引)業者です。

 消費者はまず、行き先や金額といった購入条件をプライスラインに送ります。するとプライスラインはこの条件を即座に、提携先の複数の航空会社に伝えます。これに対して各航空会社は見積もりを示し、その中からプライスラインが消費者の条件に最も合うものを選んで消費者に連絡するというビジネスです。買い手の消費者が売り手を選ぶことから「逆オークション」と呼ばれ、ホテルの空室などに対象を拡大しています。

 実はこのプライスラインのビジネス手法は、98年末に米特許商標庁によって特許として認められました。従来から逆オークションの仕組みはありましたが、それとインターネット技術を組み合わせたことが特許になった理由です。

 このように情報システムを生かして実現したビジネス手法を対象にした特許を、ビジネスモデル特許と呼びます。米国では80年代から特許出願が相次いでいます。

◆効果
先行者の利益を守る

 ビジネスモデル特許が注目を集めるのは、最新の情報技術を駆使すれば、様々なアイデアが新たなビジネスチャンスに直結するようになったからです。ところが特にインターネットを利用したECにおいては、独創的なアイデアが簡単にまねされかねません。

 そこでこうした事態を避けて先行者の利益を守るために、特許で防御しようというわけです。実際、プライスラインは99年10月に特許侵害でマイクロソフトを提訴しました。

 もちろん一方で、様々なビジネスモデル特許を認めてしまうとECの発展などを阻害しかねないといった意見もあります。

◆事例
日本では凸版印刷の「マピオン特許」

 最近米国で話題になったビジネスモデル特許は、ネット書籍販売のアマゾン・ドット・コムが権利を持つ「1(ワン)クリック特許」です。これはクレジットカード番号などを伝えて以前に購入した経験があれば、それ以降は欲しい書籍を選んで画面上のアイコンを1回クリックするだけで注文が完了するサービスです。

 アマゾンはライバル企業であるバーンズ・アンド・ノーブルを特許侵害で提訴。裁判所はこれを認めて、バーンズに対して使用の差し止めを命令しました。

 日本における代表例は、凸版印刷の「マピオン特許」でしょう。WWWで表示した地図上の建物などと広告情報を関連づけてサーバーに蓄積し、利用者が建物をクリックするとその広告を表示する仕組みです。飲食店などが自らの簡単な操作だけで広告を出せる新しい広告方法として、特許が認められました。

神保重紀 sjin@nikkeibp.co.jp