製造から販売までのモノの流れを一貫して把握し、部門間あるいは企業間で情報を共有して経営効率を向上させる手法。過剰在庫や欠品を防ぐことがねらい。

 「SCM」は、資材や原材料の調達から製品を顧客に届けるまでのプロセスを効率化する取り組みのことです。最大の目的は在庫の最適化です。最適化するためには、必要な時に必要な量だけを生産できる体制が不可欠となります。

 これまで、部門間で情報共有が十分にできていないことが、過剰在庫や欠品の原因になっていました。例えば、生産計画を立てる際に、判断材料となる販売計画が実需よりも多いなど正しい情報が渡されていなかったり、生産計画に需要を反映するタイミングが遅いといったことが欠品や在庫過多を起こす原因となっていました。

◆効果
企業の壁を越える

 こうした状態を改善するには既存の業務プロセスを見直す必要があります。

 需要予測の精度を向上させるために需給調整を専門に担当する部署を新設したり、店頭の売れ行き情報を取り込む頻度を月に1回から週1回に切り替えるといったことが考えられます。併せて、生産サイクルも週次に短縮して需要の変動に対して柔軟な対応ができる改革も必要となります。計画を修正できる回数を増やすことで、実需と生産量を近づけて適正在庫になることを目指しています。

 さらに、社内だけでなく企業の枠を超えて情報を共有しようとする動きが出てきています。原材料メーカー、完成品メーカー、卸売業者、小売業者といった、サプライチェーンにかかわるすべての企業で情報を共有するのです。生産量や販売量といった生産能力や需要に関する情報を共有することで、各社の需要予測の精度を高めて欠品や在庫過多となることを防ごうとしています。

 さらに、精度を向上させるために需要予測の結果をお互いに見せ合うCPFR(需要予測と在庫補充のための共同事業)に取り組んでいる企業が小売業を中心に増えています。

◆事例
不良在庫を1/100に

 サッポロビールは、2000年からSCM改革を実施しています。月次だった生産サイクルを週次に切り替えるとともに需要予測のやり方を変えました。これまでは、営業部門から出される月間の販売計画に基づいて生産計画を立案していました。販売計画には、実需に加えて目標分も含まれているため、結果として売れ残ってしまうことがありました。

 改革によって原液を仕込む段階で大まかな予測をして、さらに充てんする直前に週次の販売状況を加味して、修正を加える体制に切り替えました。これによって5年間で廃棄ロスが10分の1に、不良在庫が100分の1に削減できました。

(西 雄大)