業務手順や社内体制といった組織内部の仕組みについて、不正が起きないように規律を働かせること。米国の企業改革法では、経営者に内部統制確立を求めている。

 西武鉄道の株主虚偽記載、カネボウの粉飾決算など、上場企業の情報開示を巡る不祥事が相次いでいます。西武鉄道事件をきっかけに有価証券報告書を訂正した企業は、開示対象企業の1割以上。投資家が企業の情報開示を信用できない状況は、望ましくありません。

 経営の規律を保つ仕組みとしては、外部の人が参画する株主総会や社外取締役、会計監査などがあります。これらの「外部統制」に対し、最近は「内部統制」という言葉がクローズアップされています。内部統制は、業務手順や社内体制といった組織内部の細かな仕組みにまで踏み込んで、不正が起きないように規律を働かせることをいいます。

 例えば、交際費を支出するときに、直属の上司以外に第三者的な部署が内容をチェックするのも内部統制の一種です。他社との取引で独占禁止法や下請法などの法令に抵触する可能性がある場合に、法務部門が必ず介在するルールにするといったことも該当します。

◆動向
米国の厳しい法規制が波及

 こうした内部統制は、昔からどこの企業でも取り組んでいることでしょう。最近になって注目を集めているのは、いくらもの言う株主や社外取締役がいても、内部の巧妙な不正を見抜くのは難しいことが分かってきたからです。

 米国では、エンロン社などの粉飾決算を見抜けなかった反省から、2002年に企業改革法(サーベンス・オクスレー法、SOX)を制定。経営者に適切な財務報告を実現できる内部統制を確立・維持する責任を課しています。さらに、経営者は財務報告が正しいことを宣誓しなければならず、虚偽があった場合には最長20年の禁固刑など、厳しい処罰が待っています。規制に従うには業務ルールを文書化するなどの手間がかかり、コスト増に悩む企業も多いようです。

 松下電器産業や京セラなど30社程度の日本企業が米国で上場しており、この法律が適用されます。国内でも、金融庁が内部統制に関する規制強化を検討する方向性を示しており、今後、米国と同様の法規制が導入される可能性があります。

◆事例
COSO採用し業務分析

 米国で上場する三菱東京フィナンシャル・グループは、今年9月をメドに企業改革法に対応した内部統制を確立します。「COSO」という内部統制の標準フレームワークを採用し、傘下の東京三菱銀行だけで約5000の業務プロセスを洗い出して文書化。財務報告に影響する誤りが発生する余地がないかどうかを精査しています。

(清嶋 直樹)