NTTが2002年に発表した構想「“光”新世代ビジョン」を実現するための新しい通信サービスと通信ネットワークの総称。光ファイバーを使った多様な通信を可能にする。

 遠くに離れた場所にいる相手の姿が目の前にリアルに浮かび上がり、その映像と会話を交わす——。SF映画の中で昔からよく見られる光景です。こうした世界を現実のものにすべく、NTTの和田紀夫社長が2002年11月に発表した通信サービスや通信ネットワークの総称が「RENA(レナ)」です。

 映像や声がリアルであれば、相手の顔を見て世間話をするだけにとどまりません。ビジネスの世界でも様々な用途に使えるのではないかと、NTTは思い描いているのです。RENAの頭文字である「Resonant」は、「共鳴する」という意味です。

 家庭やオフィスでRENAサービスを使う場合、基本的には光ファイバーを1本引けば済み、通信速度や映像品質に応じて何段階かの料金メニューが用意されるでしょう。また、セキュリティーを確保したうえで複数のオフィスを結んだり、簡単に情報配信できるメニューも提供される見込みです。

◆効果
64兆円もの経済インパクト

 NTTの和田社長は、2007年度末までにRENAサービスを一通り商用化して、高度な映像コミュニケーション社会を実現したいと宣言。日本経済へのインパクトは年間64兆円にもなると見ています。製造や小売り、物流、金融、医療など産業ごとに企業の商品力が高まるだけでなく、業際を超えた協業や新ビジネスの創出が活性化すると予測しているのです。

 RENAが手ごろな料金で使えるなら、在宅勤務や共同事業などを実現しやすくなるでしょう。会議や営業、販売、顧客サポートなど様々なシーンで仕事のやり方に大きな変革が起こると予想されます。

◆課題
実現には不安材料も

 実は、RENAの商用化には不安材料があります。NTTは持ち株会社ですが、NTT東日本やNTT西日本、NTTコミュニケーションズ、NTTドコモといった通信サービス事業を手がける主要4社への影響力はさほど強くありません。これらNTTの事業子会社は、RENAの提供に積極的ではないのです。すぐに収益源になるか分からないRENAサービスよりも、既存のサービスに力を入れたいからです。このままではRENAは、絵に描いた餅になりかねません。

 そこでNTTは2003年12月、NTTレゾナント(東京・千代田)という100%子会社を設立しました。同社は、RENAサービスを順次実用化していき、それらをNTT東西やNTTコミュニケーションズなどグループ各社に卸売りします。RENAサービス第一弾は、NTTレゾナントが今秋をめどに提供します。ただし、サービス内容はまだ明らかにされていません。

杉山 泰一 ysugiyam@nikkeibp.co.jp