どのようなデータが、どのような状況のときに、どの種類のストレージ(記憶装置)で管理する(あるいは廃棄する)といったルールを取り決めたデータ管理手法。

 情報システムが扱うデータを保存するストレージ(記憶装置)には、実に様々な種類が存在します。高速なディスクアレイを光ファイバーで接続するストレージシステムや、サーバーに搭載しているハードディスク、データの複製に使うCD-R(書き込み可能なCD)、データの「倉庫」として使う磁気テープなど多様化が進んでいます。

 一般に、データの読み書きが高速で信頼性の高いストレージほど、機器の価格や運用コストが高くなります。そのため、データの重要性に応じて、ストレージを使い分ける必要があります。

 同じ種類のデータでも、鮮度によって重要度が異なります。例えば、顧客の購買履歴であれば、過去1カ月分は高速なストレージで管理する必要があるでしょうが、10年前のデータであれば磁気テープで保管するか、あるいは廃棄しても構わないでしょう。

 このように、どのようなデータが、どのような状況のときに、どのストレージで管理する(あるいは廃棄する)といったルールを取り決めて、実行することが「ILM(情報ライフサイクル管理)」です。

◆効果
業務のサービスレベルを向上

 ILMを実践することの利点は大きく2つあります。重要度の低いデータを管理コストが低いストレージに移行することによって運用保守費が削減できることと、重要度の高いデータを高速なストレージに置くことで業務アプリケーションの効率を高められます。ILMは、業務のサービスレベルを管理する基盤となる取り組みと位置付けられるでしょう。

 ストレージ間でデータを移行するのは人手で処理するケースが一般的ですが、あらかじめ管理のルールを指定すると自動的に移行してくれる運用管理ソフトも製品化されています。

◆事例
データを階層管理

 米国の大手インターネット接続事業者、アースリンク社は、重要度に応じて情報資産を階層的に管理しています。重要度やアクセス頻度が高い第1階層のデータは高速なストレージシステムで管理。次に重要度の高い第2階層のデータは低価格のストレージシステム、第3階層のデータはLANに直結するNAS(ネットワーク接続型ストレージ)で管理するといった具合です。重要度の低いデータは磁気テープで保管しています。

 このシステムを提供している米EMC社によると、ストレージ機器の価格を1メガバイト当たりに換算すると、第1階層に使ったストレージシステムが5セント以下、第2階層が3セント以下といった具合に、重要度が低くなるほどコストが低くなっています。

吉川 和宏 kyoshika@nikkeibp.co.jp