商品やサービスの価格を消費税額を含めた金額で表示すること。顧客はレジで支払う税込みの価格を店頭やチラシで確認できるようになる。

 店頭やチラシの価格表示が、2004年4月1日から大きく変わります。消費税額を含めた「総額表示(内税方式)」が義務付けられるのです。ただし、現在のところは、多くの人が総額表示への移行を知らないのが実情のようです。

 消費税が導入されて以来、ほとんどの小売店は店内で商品の本体価格を表示し、レジで会計するときに5%の消費税額を加算する「外税方式」を採用してきました。総額表示を採用する小売店もありましたが、どちらを選択するかは各小売店の判断に任されていたのです。

◆課題
残り5カ月で対応困難

 外税方式を採用していた小売店は2004年4月までに、値札やPOP広告(店頭販促広告)、チラシ、カタログなどの価格表示を換えなくてはなりません。レシートの表記も変わります。POS(販売時点情報管理)システムの変更も必要です。多くの企業からは、時間的にもコスト的にも期限までの対応は困難との声が出始めています。

 最近は24時間営業や深夜営業、年末年始営業をしている小売店も多く、POSシステムを止められる時間は限られます。非常に制約が多いなかで、システムの変更が要求されます。

 総額表示への移行期間中には、店内に総額表示と本体価格表示が混在することが考えられます。そのとき、既存のPOSレジを改良しただけで、外税と内税の混在を処理できるのかといったシステム面の検証課題は山積みです。レジが総額処理になれば、会計システムの変更も必要になってくるでしょう。

 店頭が総額表示になるなら、取引先への商品発注の金額も総額にすべきかどうか、小売店は検討に入っています。総額と本体価格が混在すると、受発注システムの処理が複雑になるからです。とはいえ、小売店の取引先は中小企業が多く、素早い対応は難しいと見られています。

 価格表示が変われば、顧客の混乱が想定されます。しかも総額表示になると、顧客は価格を値上げされた印象を受けかねません。実は小売店が最も気にするのがこの点です。レジで支払う金額は今までと同じでも、店頭価格が高くなったように見えます。

◆事例
反対ながらも移行へ

 イトーヨーカ堂やイオン、ファミリーマートなど大手スーパーやコンビニエンスストア102社が加盟する日本チェーンストア協会は2003年10月8日、総額表示への移行には反対の姿勢を示しながらも、総額表示を実施する方針を打ち出しました。

 さらに顧客には、自分がいくら消費税を負担したのかを知っておいてもらうため、レシートに消費税額を表示する方向で調整を進めています。

川又 英紀 hkawamata@nikkeibp.co.jp