大型汎用コンピュータで構築した基幹システムを、UNIXやウインドウズのサーバーに移行すること。経営戦略を素早く実行できる形に、構造を設計し直すのが最近の傾向。

 調査会社の米ガートナー データクエストによると、日本市場における2002年度のメインフレーム(大型汎用コンピュータ)の出荷台数は1538台。5年前の半分以下になりました。年々、減少傾向にあり、2007年度には788台になると予測しています。

 多くの企業はかつて、メインフレームを使って基幹システムを構築し、今もなお使い続けています。ところが、ここ数年、こうした既存の基幹システム、いわゆるレガシーシステムを、UNIXやウインドウズのサーバーに移行するケースが増えています。これを、「レガシーマイグレーション」と呼びます。

 90年代半ばごろにも、オープンシステムと呼ばれる、UNIXやウインドウズを使ったシステムへ移行する動きが話題になりました。ここへきて、オープン系のサーバーの信頼性が上がってきたことや、移行を容易にするツールが登場したことから、改めて脚光を浴びています。

◆効果
スピード経営の基盤に

 メインフレームから移行する目的の1つはコスト削減です。UNIXやウインドウズのサーバーに乗り換えれば、ハードウエアの導入費を抑えられます。また、メインフレームの場合はコンピュータ会社独自の技術に強く依存します。次第に専門知識を持った技術者が少なくなってきていることもあり、オープン系に比べて運用コストもかかるのです。

 コスト削減ばかりではありません。10年前との大きな違いは、システムの設計思想にあります。最近は、ハードを変更するだけでなく、システムを拡張・変更しやすいように、応用ソフトやデータの構造を抜本的に見直す企業が増えています。

 狙いは、経営戦略を素早く実行できるようにすることです。経営戦略と情報システムの結び付きが強まるなか、経営環境が変わるのに伴ってシステムの変更が欠かせなくなってきました。

◆事例
150億円で全面刷新

 JTBは、基幹システムの再構築を、2008年度中に完了させる計画です。

 およそ20年前に、国内・海外旅行商品や航空券などの予約・販売を担うシステム「TRIPS」をメインフレームで構築しました。現在は、ピーク時で1日約100万件の処理を実行する国内屈指の大規模なシステムです。これをUNIXサーバーを使って全面刷新し、メインフレームを撤廃する決断を下しました。投資額は約150億円に上ります。

 顧客ニーズの変化に合わせて、新しい旅行商品を短期間で開発・販売できるようにするとともに、年間約30億円の運用コストを削減できる見込みです。

相馬 隆宏 souma@nikkeibp.co.jp