一品一品について商品の販売個数や在庫数を把握し、日々の発注数量を決める管理手法。コンビニエンスストアなどの小売業で導入が進んでいる。

 消費者が求める商品を常に切らさず用意し、なおかつ売れ残りを極力抑えるためには、1つひとつの商品についてその販売個数と在庫数を正確に把握しておく必要があります。単に、おにぎりが何個売れたという情報だけでは不十分。1個100円の梅干し入りおにぎりが何日の何時にどのくらい販売されたかを把握しておかなければ、消費者が満足する品ぞろえはできません。日々刻々と売れていく商品について、1品1品の販売個数と在庫数をつかんで商品を管理する手法を、「単品管理」と呼んでいます。

◆効果
消費者のニーズつかむ

 夏になると、同じおにぎりでも、日持ちがし、かつ食欲をそそる梅干し入りのおにぎりが売れるといわれます。そのために、そのおにぎりが梅干し入りかどうかまでつかんでおくことは意味があることです。

 昔なら、梅干しがなければ、鮭か昆布入りを買ってくれましたが、今の消費者は買いたいと思う商品(梅干し入りのおにぎり)がなければ、すぐに別の店に行ってしまいます。商品を切らしてしまうと、販売機会の損失になり、顧客からの信頼も失います。

 ですから商品の発注では、一品一品、丁寧に考える必要があります。その日が晴れなのか雨なのか、蒸し暑いのか涼しいのか、近くでイベントがあるのかないのか、こうした情報を基に発注数量を決めます。そうすれば、消費者が求める商品の品ぞろえが可能になります。

◆事例
POS導入で精度が高まる

 単品管理は、1973年にセブン-イレブン・ジャパンを立ち上げた鈴木敏文会長(兼イトーヨーカ堂会長)が編み出した手法といわれています。74年5月にセブン-イレブンの1号店がオープンしますが、当時から1品1品の売れ行きを見て、品ぞろえを行っていたようです。同社は82年にPOS(販売時点情報管理)システムを導入し、売れ筋と死に筋商品を的確に把握できるようになり、以前よりも単品管理の精度が高まりました。

 例えば、今週末の土曜日には、店の近くで野球大会が予定されており、晴れて蒸し暑くなるので、梅干し入りのおにぎりと麦茶、それにバナナを多めに発注し、当日の朝に備えたとします。この仮説が正しかったどうかは、POSデータで検証します。検証結果は次回の発注に生かされ、さらに仮説と検証を繰り返すことで消費者ニーズを掘り起こしています。

 今では、イトーヨーカ堂やイオンといった大手スーパーをはじめ、全国の中堅スーパーなどでも導入が進んでいます。とりわけ商品を買い取る小売業にとっては、不可欠になりつつあります。

多田和市 wtada@nikkeibp.co.jp