米モトローラ社が日本の品質管理手法(QC)をヒントに編み出した経営革新手法。現場での品質向上活動を経営体制にまで広げた点が特徴だ。

 米ゼネラル・エレクトリック(GE)社が導入し、成果を上げている経営革新手法。3年目で3億ドル以上の利益を生み出し、1999年度には15億ドル以上の経費削減効果を上げました。構造的な改革が求められている中、日本企業の多くが注目しています。

 従来は平均値で捉えられていた製品やサービスの品質を、バラツキの概念を取り入れているのが特徴です。「シックスシグマ」のシックスは、数字の6。シグマはある分布のバラツキを示す標準偏差のσです。1σから6σへと、数字が大きくなるに従って分布のバラツキは少なくなります。シックスシグマ(6σ)の場合、100万回当たりの不良率は3.4回です。ちなみに、5σでは233回、4σでは6210回。シックスシグマ活動のポイントは、バラツキを極端に抑えることです。

◆効果
品質のバラツキを抑える

 例えば、注文を受けてから料理が客に配膳されるまでにかかる平均時間が15分の店が2軒あったとします。Aレストランは3分で出てくる時もあれば、30分近く(27分)もかかる時があります。Bレストランは早くて13分、遅くても17分です。平均値で見れば同じ15分でも、Bレストランのほうがサービスのバラツキがなく、不満はほとんどありません。

 もう1つは機械メーカーの例。Cメーカーが作る製品の信頼性は競合他社と比べて特別に高くないが、品質のバラツキは少なく、不良品は滅多に出ません。DメーカーにはCメーカーよりも信頼性の高い機械を作る技術力があります。しかし、品質にバラツキがあり、不良品をよく出します。

 経営的な品質が高いのはBレストランとCメーカーです。シックスシグマは、これら2社のように品質のバラツキを抑えるための活動です。実際に活動を推進するメンバーには、チャンピオン(経営トップ)、マスター・ブラックベルト(改革に精通した、特に優秀なメンバー)、ブラックベルト(優秀なメンバー)、グリーンベルト(現場)という名称がつけられています。

◆事例
東芝やシマノが導入

 日本企業の導入も増えています。東芝は、99年4月から「MI(マネジメント・イノベーション)2001運動」とし、シックスシグマ活動を自社向けに手直した活動に取り組んでいます。数千規模のプロジェクトが動いており、2001年度に2000億円を超えるコスト削減効果があったといわれています。

 自転車用部品メーカーのシマノは、設計や品質管理、顧客対応で710件のプロジェクトを実施。3年で約41億3500万円の経費削減効果を生みました。そのほか、ソニーが独自に作り変えて製造からマーケティングまで幅広く業務改革に導入しています。

多田和市 wtada@nikkeibp.co.jp