技術投資の費用対効果を最大化するマネジメント手法。技術経営とも呼ぶ。技術と経営の両面に精通する必要があり、そのための人材教育が求められている。

 スイスの民間調査機関であるIMD(International Institute for Management Development)が毎年、世界の国々の競争力ランキングを発表しているのはご存じでしょう。この調査で、日本の「国際競争力」は長年低迷しています。1993年までは1位だったのに、98年には18位まで急落。その後も下落傾向が止まりません。

 このランキングの評価項目のうち「科学技術」と「マネジメント」の項目を見ると、面白いことが分かります。科学技術に限れば、日本は米国に次ぐ2位であり(2000年調査時点)、依然として強い競争力を発揮しているのです。ところが、「マネジメント」は24位(同)にすぎません。つまり、日本は優れた技術を経営に生かす力が弱いと言えます。

 こうした事態を憂慮し、「技術と経営の双方に強い人材」を育てようという機運がようやく高まってきました。

◆効果
技術と経営に強い人材育成

 企業にとって技術と経営は不可分です。技術をより効果的にビジネスにつなげ、競争力を強化するマネジメントが必要で、これを「MOT(Management of Technology)」と呼びます。

 例えば、ここに新しく開発した技術の芽があるとします。それがビジネスにどれほどのインパクトを与えるのかや、どんなマーケットの開拓に役立つのかといったことをイメージできなければ、その技術にさらに投資すべきか否かを意思決定できません。

 経営者には今まで以上に「技術を見る目」が必要ですし、技術陣には「技術をビジネスにつなげる力」が求められているのです。

 MOTはもともと、米国で発展したと言われます。工業国としての相対的地位が低下した米国は、MOTに活路を求めたのです。今では多くの大学でMOTプログラムを用意しており、米国経済復活の基礎になりました。

◆事例
MOT大学院が続々

 日本でもMOTへの関心が急激に高まっており、多くの大学がMOT課程を新設する計画です。例えば、早稲田大学や芝浦工業大学は今年4月、全国初のMOT専門大学院を開設します。芝浦工大は夜間や土曜日に講義をし、社会人の受講に対応するそうです。

 企業内研修でMOTを採用する企業も出てきました。大阪ガスは昨年10月、「大阪ガス技術経営〈MOT〉スクール」を開講。国内外の最新のケーススタディーを基に、年間80回の講義を通じて、経営が分かる技術者の育成に取り組みます。同スクールは他社にも公開しており、現在、大阪ガスを含めて15社、計32人の受講者がいるそうです。

花澤 裕二 hanazawa@nikkeibp.co.jp