デジタル地図に人口データや道路交通量、建物の位置などを組み込んだ地理情報システムのこと。企業が出店戦略を立案したり、販売促進の指針を決定するのに使う。

 あなたがスーパーマーケットのチェーンを展開する企業の社長になったとします。どこに店を出したらよいのかを、どうやって考えますか。

 最初のうちは、目を付けた地域を自分の足でくまなく歩き回るのがよいでしょう。人の流れや立地条件、ビルの外観を眺めて、出店場所を1つひとつ確保していくのは、非常に手堅いやり方だと言えます。

 ところが店舗が10店、20店と増え、全国展開を目指すとなると話は違ってきます。検討すべき地域は爆発的に増え、ある程度場所を絞ってからでないと現地には行けなくなります。すべてを現地調査していたのでは、いくら時間があっても足りません。

 事前に大まかな検討を終えて候補地を絞り、そこで初めて現地調査に乗り出すのが賢いやり方。そんな際に役立つのが、「GIS(地理情報システム)」です。

 GISには地図画面とともに、人口データや道路交通量、既存店の場所などの情報を登録できます。調べたい地域を指定するだけで、そのエリアの商圏特性が分かるのが最大の特徴です。

◆効果
短時間で詳細に調査できる

 あるエリアには何人が住んでいるのかといった基本的な調査から、出店できそうな場所はどこか、競合店はあるのかといった詳細な調査まで、事前に検討しなければいけない項目はたくさんあります。

 GISを使えば、こうした調査を数分で完了できます。このスピードが、短期間での大量出店や、他社より先回りした出店を可能にするのです。

 GISは営業支援ツールとしても力を発揮します。出店の候補地が決まったとき、営業担当者はその土地や建物のオーナーに出店の提案書を持っていくことになるでしょう。それをGISで作成すると、地図やグラフと人口データなどの数値を組み合わせたビジュアルな資料に仕上げることができます。説得力があって、理解しやすい提案書を素早く作れるようになるのです。

◆事例
1700万人を地図表示

 レンタルビデオ店「TSUTAYA」を展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブは、全国1100カ所にある店舗情報と1700万人いる会員情報を、独自に開発したGIS上に蓄積しています。GISを見れば、会員がどのエリアに住んでいて、どのくらいの頻度で店舗に来ているのか、客単価はいくらかといった情報を一目で確認できます。

 人口データと会員情報を比較すれば、特定エリアに住む人のなかで、TSUTAYAの会員になっている人の割合を算出することも可能です。会員の割合が低いエリアに集中して販促を打つこともできます。

川又 英紀 hkawamata@nikkeibp.co.jp