電磁波のやり取りによって、情報を記録する小型の記憶媒体。バーコードに比べて記憶容量や耐久性が優れており、流通業の商品管理などで実用化が始まっている。

 旅行や出張の際、スーツケースなどの大きな荷物は空港で預けます。目的地に到着して、ベルトコンベヤーで流れてくる荷物には、バーコードが印刷された荷札が取り付けられています。空港関係者はこのバーコードで荷物を管理しているのです。

 ところが、荷物を持ち運ぶ際に荷札が折れ曲がったり汚れたりすると、管理システムがバーコードを正確に読み取れないことがあります。これが原因で、搭乗者の荷物が目的地に届かない事態が発生していました。

 航空会社や国土交通省が、この問題を解決するツールとして採用を検討しているのが「非接触型ICタグ」です。航空業界以外でも、バーコードに代わる記録媒体として注目を集めています。

◆効果
耐久性と情報量が利点

 非接触型ICタグは、ICチップを樹脂などで包んだもの。電磁波を媒介にして、読み書き装置と情報をやり取りします。まず、読み書き装置が電磁波を発信。非接触型ICタグがそれを受信すると、ICチップが作動して情報の読み取りや書き込みを行います。

 形状は様々で、コイン型やラベル型などがあります。全長は小さいもので数センチ程度。電磁波が透過すれば、服やかばんに入っていても情報を読み書きできます。

 非接触型ICタグがバーコードに比べて優れている点としては、「耐久性の高さ」と「収録できるデータ容量の大きさ」が挙げられます。

 非接触型ICタグは、樹脂などの素材で包んでも情報をやり取りできます。このため、素材によっては、180度の高温にある環境でも利用できます。

 記憶容量もバーコードを大幅に上回ります。非接触型ICタグは100バイトから4キロバイトの記憶容量を持っており、バーコードの10倍以上の情報を蓄積します。

 この2つの特徴があるため、幅広い用途で実用化が進んでいます。

◆事例
棚卸し作業を効率化

 航空業界では2001年10月、国交省や日本航空などが共同で、新東京国際空港において非接触型ICタグによる荷物自動仕分けの実証実験を行いました。2005年の実用化を目指しています。

 中堅アパレルのフランドル(本社東京)は、2003年半ばをメドに商品の色やサイズを非接触型ICタグに記録し、倉庫や直営店に入荷する際に商品情報を確認できる体制を構築します。これによって、従来3~4日かかっていた商品の棚卸しを、1日で済ませることが可能になる見込みです。まず、一部のブランドで採用。予想通りの効果が確認できれば、2005年をメドに対象を全商品に拡大する方針です。

長谷川 博 hhasegaw@nikkeibp.co.jp