販売情報や顧客情報など蓄積した膨大なデータを意思決定に役立つように加工すること。一般に、データ・マイニングといった分析ツールを活用する。

 月初めのある日、衣料品製造小売業のマーケティングを担当するA氏は出社して間もなく、イントラネット上に公開された販売実績の分析レポートに目を通し始めました。この秋に投入した新作のスカートの売れ行きはなかなか好調なようです。

 さらに、そのスカートを買った顧客の多くが、一緒にあるシャツを買っていることに気づきました。すかさず両商品の追加生産を決断。店舗にはその2つの商品を近くの棚に置くように売り場変更の指示を出したところ、その月の売り上げを前月から倍増させることができました。

 いまや、販売情報や顧客情報をはじめ、膨大なデータを蓄積している企業は少なくありません。勝負の分かれ目は、そうしたデータから他社に先駆けてビジネスチャンスを見いだせるかどうかです。

 このように集めたデータを素早く分析・加工して、経営者や業務担当者が意思決定できる形で提供する手法を「ビジネス・インテリジェンス」と言います。

◆効果
データ整備とノウハウの蓄積がカギ

 具体的には、膨大なデータを蓄積するデータ・ウエアハウスやOLAP(オンライン分析処理)、データ・マイニングといった高度なデータ分析ツールを使います。ただし、ツールを導入しただけでは成果を上げられません。まず、明細データを管理することが大前提となります。要約したデータだけでは、有効な情報が埋もれてしまうからです。冒頭で紹介したケースも、顧客が1回の買い物ごとに何を買ったかを細かく把握していたからこそ成功したわけです。

 どのデータを対象に、どういう切り口で分析するかというノウハウの蓄積も欠かせません。実際は、営業部門などの利用者とツールを操作する分析部門が話し合い、分析方法を決める形態が多く見られます。それに基づいて、定期的にレポートを配信したり、利用者が簡単な操作で所望のレポートを作成できるように簡易分析ツールを提供します。

◆事例
前兆をつかみ先手打つ

 ビジネス・インテリジェンスの活用に着手する企業は増えています。経験や勘だけでは立ち行かなくなり、データに基づいて論理的に判断することが重視されているからでしょう。

 安田生命保険は過去の契約情報をデータ・マイニング・ツールで分析。解約の兆候を発見し、対策を打ちました。その結果、約1000億円の減収を未然に防げました。

 三井住友カード(本社東京)は、クレジットカード会員の利用履歴を分析。ゴールドカード会員への切り替えを促すダイレクトメールの送付対象を変えて、ヒット率(送付数に対する契約率)を倍増させています。

相馬 隆宏 souma@nikkeibp.co.jp