投票行為を電子化する仕組み。いくつかの形態がある。投票所で電子投票機を設置する体制や、インターネットを使って自宅からパソコンで投票できるような体制を指す。

 2000年に実施された米国大統領選挙の大騒動を読者の皆さんも、ご記憶でしょう。ジョージ・ブッシュ氏とアル・ゴア氏の間で競われた歴史的な大接戦は、手作業による投票の再集計をめぐって1カ月以上も紛糾しました。

 この騒動の大きな原因は、一部の郡が採用したパンチカード形式の投票用紙です。投票の意思を示す穴が不明確な票が少なくなかったため、あのような大騒動になりました。

 日本が採用している自書式の投票用紙でも、あいまいになる場合があります。同じ姓や似たような名前の候補がいれば、ある程度の混乱は避けられません。

 こうした問題を解決すると期待されているのが、投票の作業を電子化する「電子投票」です。

◆効果
低コストで即座に集計

 電子投票と呼ばれる仕組みには、いくつかの形態があります。タッチパネルや押しボタンによって投票の意思を示す電子投票機を投票所に設置する形態や、自宅にいながらにしてインターネットを使ってパソコンから投票できる形態が代表例です。ただし、広義には、集計を電子化できるパンチカード形式を電子投票に含めることもあります。

 電子投票機やパソコンを使った電子投票の利点は、誰に対する投票なのか分からないといったあいまいさがなくなることと、集計が容易になることです。特に、後者が、電子投票が注目される大きな理由です。

 全国規模の同日選挙では、ニュース番組が深夜まで投票結果を伝えています。個人的には、こうした番組を楽しんで見ているのですが、この作業に要するコストは膨大なものです。集計が終わるまでの間、人手による作業が続いているのです。

 電子投票であれば、人手をほとんど必要とせず、即座に集計できるようになります。今後、全国的に普及すると見られていますが、実際の導入には、各地方自治体で条例を定める必要があります。公職選挙法では、自書式の投票が義務づけられているからです。

◆事例
投票率の向上を期待

 岡山県新見市は、この6月23日の新見市長・市議会議員一般選挙で全国初の電子投票を実施しました。有権者は、郵送で送られた投票所入場はがきを投票所に持参。本人確認を受けると専用の投票カードを受け取り、これを電子投票機に差し込んで、タッチパネルで候補者を選ぶ仕組みです。

 新見市では、投票のあいまいさの排除と集計の容易性に加えて、投票率が向上することも電子投票の利点として掲げました。

吉川 和宏 kyoshika@nikkeibp.co.jp